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日外会誌. 82(7): 781-790, 1981
原著
腎血管性高血圧症の外科治療
-手術適応と術式の選択を中心に-
I.内容要旨昭和41年4月以降,現在までに教室で手術が実施された腎血管性高血圧症の14例に対して検討を加え,若干の知見をえたので報告する.
術前検査として,排泄性腎孟造影, レノグラム, レニン活性値の測定,腎動脈造影,さらにアンギオテンシンIIアナログによる負荷試験を励行し,手術適応の判定資料としている. とくに, レニン活性値(健常側と患側腎静脈レニン活性値1: 1.5以上)及び腎動脈造影所見(75%以上の器質的狭窄)は, 手術適応の決定上最も有力な指標となしえた.手術の内訳は, 人工血管を用いるaorto-renal吻合術を4例に,大伏在静脈のinterpositionによる吻合術3例,狭窄部を切除して腹部大動脈に再吻合する異所性吻合術2例,静脈片を用いるpatch grafting 1例, spleno-renal吻合術1例, 腎摘出術3例であつた. 術中, 腎動脈狭窄部の中枢側並びに末梢側での圧較差や血流量を血行再建術の前後で測定し, 手術の効果判定によい指針をえた.
吻合時に用いるgraft材料として,人工血管,大伏在静脈, 脾動脈などを使用してきたが,最近では大伏在静脈を用いるinterpositionによるaorto-renal吻合術を行い,満足すべき結果をえている.
術後の遠隔成績は,最長14年,最短1年(平均6年8カ月)のfollow up期間中, 1例を術後2年目に尿毒症で失つたが,他の13例は生存し,血圧もよくコントロールされ, 社会に復帰している.Graftの開存率については, 12本のgraftのうち8本が開存,4本で閉塞が認められたが, うち2本は人工血管を使用した初期の症例であり,他の2本中1本はpatch grafting,残りの1本はspleno-renal吻合術例であった.
かかる所見から,直径5mm以下の細い腎動脈との吻合には大伏在静脈を第ー選択として使用するのが望ましいと考えられた.
著者らの手術経験を中心に,本症の成因,診断に必要な検査法,手術適応並びに手術術式などについて述べ,さらに内外における本症の手術成績についても言及した.
キーワード
腎血管性高血圧症, レニン・アンギオテンシン系, Aorto-renal吻合術, 腎動脈異所性吻合術, 腎摘出術
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