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日外会誌. 82(7): 739-747, 1981
原著
肝癌に対する術中照射療法の基礎的研究
I.内容要旨切除不能肝癌に対する治療法の一つとして術中照射法による放射線療法の可能性を検討した.術中照射療法を行うに際し,重要なことは,その安全性の確認である.そこで,正常肝に対する放射線1回大線量照射の影響を肝機能および,肝の形態学的変化を中心に検索し,ついで肝に移植したVX2癌に開腹術中照射し,その延命効果および腫瘍発育抑制効果を検討した.
方法① 正常肝に対する放射線照射の影響 家兎の肝左葉(全肝の40~50%領域)にベータトロン電子線5,000radを開腹照射し,照射後,経時的に,肝機能,肝の形態学的変化を検討した.② VX2癌を肝左内側葉に移植し, 2週後に腫瘍と,その周囲肝組織を若干含め, 4,000rad照射し, その生存日数と腫瘍の縮少度を検討した.
結果① 正常肝照射では27羽中4羽が死亡した以外は全て, 正常に生育した. ② 肝機能検査では,GOT,GPTとも照射後早期に軽度上昇したが, 1週以内に正常に復し, アルブミンは照射後15~20%低下したが,4週までには回復した. ③ 肝の形態学的変化,照射後の時間経過につれて,照射葉の萎縮がみられ,非照射葉では肥大した.組織学的には,初期には,照射葉の一部に変性壊死巣が小集団として点在した. 3日~ 1週ではうつ血,胆汁うつ滞がみられ,その後, 徐々に線維化が発生した.非照射葉は,ほぼ正常であつたが1週までは肝内門脈,中心静脈,ジヌソイドのうつ血がみられた.④ VX2癌に対する照射効果,照射群では,対照に比べ,より長く生存し,平均生存日数は前者で35.9±10.3,後者で25.3±8.0 (p<0.01) であつた. 腫瘍の縮少度は,死亡時の観察では, 全ての照射群が腫瘍径0.5cm以下に退縮しており,対照群は全て, 5~6cm径に増大していた.組織学的にも照射群では,腫瘍細胞の広範な変性壊死を認めた.
キーワード
切除不能肝癌, 放射線療法, 術中照射, ベータトロン, VX2癌
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