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日外会誌. 82(7): 708-716, 1981
原著
広範囲熱傷患者に対するGIK(Glucose-Insulin-Kalium)療法の効果について
第Ⅰ報:循環動態の改善と利尿効果を中心にして
I.内容要旨広範囲熱傷初期患者におこる細胞膜のactive transportの障害に対し,膜分極状態の是正を目的としたGIK療法を試み,その有効性について心機能と利尿効果の面より検討した.
対象は昭和54年4月より昭和55年10月まで当科に収容した次の3群である.熱傷初期群:受傷後48時間以内の広範囲熱傷初期患者9例(平均熱傷面積71±6%, Burn Index 110±13).sepsis群: 熱傷初期群のうちsepsisに陥つた3例. control群:受傷後2週間以上を経て呼吸循環動態の安定した頭部外傷患者3例. 方法は50% glucose 100ml, regular insulin 75単位, KCl 10mEqよりなるGIK溶液を15分間で点滴投与し, GIK投与前,GIK投与終了時より15分後,30分後,60分後,120分後に次のパラメーターを比較検討した;血糖値,HR,MAP,CI,SVI,TPRI,LVSWI,尿量,尿糖値. また, 広範囲熱傷初期患者4例(平均熱傷面積72±17%, Burn Index 124±34) には50% glucose 100ml のみを投与してCI を経時的に測定し,広範囲熱傷初期患者2例には同時に循環血液量を測定した.
熱傷初期群ではGIK療法によりSVIの増加に基因するCIの増加 (p<0.05) やLVSWIの増加 (p<0.05),TPRIの低下 (p<0.05) がみられた. これに対し,control群では極めて軽度で一過性のCIの増大を生じたのみで,sepsis群では全く変化がおこらなかつた. 熱傷群におけるこの心機能改善効果は高張糖液投与や循環血液量測定などの検討の結果,循環血液量の増大効果によるものではなく,心収縮力の賦活効果によつてもたらされたものと判明した.熱傷初期群ではGIK療法によりCIの増加に一因する尿量の著明な増加 (p<0.01) がみられた.一方,control群やsepsis群でもGIK療法により尿量の増加がみられたが,その効果は一過性で大部分は惨透圧利尿によるものと考えられた.
キーワード
広範囲熱傷患者, GIK療法, 高張糖液投与, 心機能改善効果
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