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日外会誌. 82(6): 658-670, 1981
原著
乳頭部癌の血管造影学的研究
I.内容要旨膵頭十二指腸切除術により切除した乳頭部癌34例の血管造影所見を肉眼型,大きさ,組織型,腫瘍の拡がりについて検討し,またその内13例には摘出臓器血管造影, microangiographyおよび透明標本を作製し,病巣部の血管構築像を観察すると共に,組織学的所見を加味して乳頭部癌の特異的血管像に検討を加え,診断能の向上をはかつた.乳頭部癌の血管造影でみられる主な所見はtortuosity,arterial encasement,hypervascularity,tumor stain であり,これらの所見を認めた有所見例は50.0%であり,この内診断可能であつたものは32.3%であった.肉眼的には腫瘤限局型,潰瘍浸潤型にencasement,hypervascularity,tumor stainが多くみられた. 大きさについてみると, 2cm 以下の小さな腫瘍では,ほとんど所見をみないが, 2cm 以上のものでは異常所見の出現頻度も高く,診断可能例も多かつた.組織型別にみると, 乳頭状腺癌ではhypervascularity,管状腺癌ではarterial encasementが特徴的な所見であつた.腫瘍の拡がりについてみると,腫瘍径が大きくなるにつれて,深達度も深くなる傾向にあり,それに伴いarterial encasementやhypervascularityが目立ち, 2cm 以上の筋層,膵浸潤例14例では50.0%が診断可能であつた.摘出臓器血管造影, microangiographyおよび透明標本を作製して病巣部の血管像を観察すると,肉眼型大きさ,組織型のいかんを問わず癌病巣部の血管密度は高く, 管腔不整を伴う細血管増生を認め,多血管性病変を示した.組織像において,腫瘍組織の中には内腔にバリウム斑を有する一層の内皮細胞に被われた100~200μ径の多数の腫瘍血管を認めた.乳頭部癌における血管造影では,質的診断も可能であり,腫瘍の拡がり,切除性の判定に有用である.
キーワード
乳頭部癌, microangiography, 透明標本, 腫瘍血管.
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