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日外会誌. 82(6): 633-646, 1981


原著

胆道閉塞解除後の胆汁分泌機序と胆汁酸排泄の臨床的意義に関する研究

東京大学 医学部第1外科学教室(指導:草間 悟教授)

白川 洋一

(昭和55年11月11日受付)

I.内容要旨
胆道閉塞解除後の胆汁分泌をめぐる病態生理学的背景を臨床例と動物実験の両面から追求した.
I. 外瘻術式による胆道減圧術(主にPTCD)を施行した25例の閉塞性黄疸患者を検討し,以下の成績を得た.① 胆汁流量は減黄効果との関連性に乏しかつた.② 胆汁流量は胆汁酸排泄量に影響されることが少なく,むしろ胆汁中HCO-3濃度と相関し, またsecretin剌激後の最大胆汁流量と1日胆汁量がよく相関した.減黄不良例ではmannitol B/P比が低い傾向にあつた.③ 減圧当日に多量の胆汁酸が胆汁中へ排泄され,血清総胆汁酸濃度は48時間以内に急速低下した.いつぽう尿中胆汁酸排泄量は比較的少なかつた.④ 胆汁中総胆汁酸排泄量は外痩作成後2日目に最も少なく,以後漸増したが,黄疸患者では無黄疸対照群よりその増加が遥かに少なく,特に減圧前の黄疸日数の長い例や減黄効果の悪い例では低値を持続する傾向が強かつた.
II. 総胆管結紮黄疸犬の閉塞解除後にtaurocholate利胆を行うと, 1mole の胆汁酸排泄に相当する胆汁量は対照犬の場合よりも多かつたが, secretin刺激に対する胆汁流量増加は両者ともほぼ同等であつ た. またtaurocholate Tmは低下していたが,血清総胆汁酸濃度は閉塞解除後4時間ですでに50%程度の低下をみた.
以上の所見を総合し,① 胆道閉塞によつて障害をうけ難い胆管上皮性の水分・電解質分泌機能がG-Iホルモンの影響下に閉塞解除後の胆汁分泌量を大きく左右する.② 胆汁中に排泄される胆汁酸量は外瘻術後48時間以内を除いて合成量とほぼ等しく,その増加の程度が黄疸肝の障害程度を代謝面から反映する,との結論を得た.

キーワード
閉塞性黄疸, 胆汁分泌, 胆汁酸, 細胆管胆汁, セクレチン

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