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日外会誌. 82(6): 612-621, 1981


原著

胃癌のリンパ節転移に関する量的な転移度・転移個数よりの検討

慶応大学 医学部外科学教室(指導:阿部令彦教授)

春山 克郎

(昭和56年2月12日受付)

I.内容要旨
胃癌のリンパ節転移に関する検討は,従来「胃癌取扱い規約」に基づいたリンパ節の存在部位による番号と癌腫の胃内占居部位に規定されるリンパ節の群別における転移の有無により,定性的ともいえる方法で行われている.これに対して人工的規定の影響を可及的に少なくすると考えられる,全摘出リンパ節を分類せず一括して扱う転移度(転移リンパ節総数/摘出リンパ節総数),および単純な転移リンパ節総数の両者に基づいて, リンパ節転移に関して定量的ともいえる方法にて系統的に検討を行った.
対象は組織学的絶対非治癒切除を除く625例である. リンパ節の存在部位別の転移度,転移率共にリンパ節が胃から離れるにしたがつて減少した.原発巣とリンパ節転移の関係では,深達度の進行に伴い,転移度,転移個数,転移率のいずれも増加し,又肉眼的分類では癌型が浸潤型になるにしたがい, 3者共に増加した. さらに組織学的な検討では,脈管侵襲陰性群および分化型は転移度,転移個数,転移率のいずれにおいても,それぞれ脈管侵襲陽性群,未分化型よりも低値であつた.n番号との関係では転移度,転移個数共にn番号が増加するにしたがつて,それぞれ増加が認められた. リンパ節転移が生存率に与える影響について, リンパ節転移度,転移個数と転移率の面よりの検討では,前2者の方がリンパ節転移の程度が生存率に正確に反映される可能性が示唆され,また転移個数が2個以下の症例の検討では, n1(+) 群とn2(+)群の間には5年生存率で差が認められなかつた. これらの諸点より, リンパ節転移度および転移個数による定量的な検討方法は,胃癌の生物学的特性をよく表現するものと思われた.また現行 「規約」は,ほぼ妥当なものとみなされるが,予後に与える影響に関して,第1群と第2群のリンパ節の間の差は, きわめて少ないものと思われた.

キーワード
胃癌, リンパ節転移率・転移度・転移個数, 生存率

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