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日外会誌. 82(4): 368-377, 1981
原著
ストレス潰瘍発生に対する凝固,線溶,キニン系抑制剤の予防効果に関する実験的研究
I.内容要旨ストレス潰瘍発生に凝固,線溶,キニン系の活性化が関与していると推定し,これらの系の抑制剤の実験ストレス潰瘍に対する予防効果を検討した.
方法:体重約200gのWistar またはSprague Dawley 系の雄ラットを用い, 24時間の絶食後, 円筒形の金網に拘束し,倒立位で低温室(4℃)に3時間放置後屠殺して胃病変を観察し,その重症度を出血指数,潰瘍指数として表した.抗凝固剤としてHeparin 50U/kg(少量群),500U/kg(中量群), 5,000U/kg(大量群),抗線溶剤としてε-aminocaproic acid (EACA群), tranexamic acid (AMCHA群) おのおの500mg/kg,抗Kallikrein 剤としてAprotinin 50,000KIU/kg (Ap群), Gabexate mesilate 5.0mg/kg (GM群) を,また対照に生食水5.0ml/kg (生食群) を,ストレス負荷直前に静注した.
結果:平均出血指数は生食群の1.7に比しHeparin大量群では2.2と高かつたが (p<0.05),少量群,中量群では0.8,1.1と低値であった(p<0.01).EACA群,AMCHA群のそれは0.7,0.9で生食群の1.6より低く(p<0.01),またAp群,GM群はそれぞれ0.8で生食群の1.6より低値であつた(p<0.01).平均潰瘍指数は生食群の11.2に比し, Heparin少量群では4.9と低値であったが(p<0.01),中・大量群のそれとは有意差がなかつた. EACA群, AMCHA群のそれは3.4, 4.6で生食群の10.3より低く(p<0.01),またAp群では3.1,GM群では5.1で,生食群の9.9より低値であった(p<0.01およびp<0.025).
結語:凝固,線溶,キニン系の抑制剤の投与により,ラットストレス潰瘍の発生を抑制した.この結果は,ストレス潰瘍の発生に,血栓形成,線溶およびキニン系酵素の賦活化か密接に関与していることを示唆し,またこれらの系の抑制剤の臨床応用の可能性を示すものと考えられる.
キーワード
ストレス潰瘍, 凝固・線溶・キニン系, ヘパリン, 抗線溶剤, 蛋白分解酵素阻害剤
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