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書誌情報]
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日外会誌. 82(2): 162-168, 1981
原著
胃全摘後の再建術式よりみた膵内分泌機能に関する研究
I.内容要旨胃全摘術術前及び術後, 1) Roux en Y 吻合群, 2) interposition吻合群に経口的糖負荷試験と経静脈的糖負荷試験を,3) 胸部食道全摘, 頚部食道胃吻合群に経口的糖負荷試験を行ない,経時的に血中グルカゴン値,インスリン値,血糖値を測定し,再建術式の立場から膵内分泌機能について検討した.経口的糖負荷試験では,血中グルカゴン値は,空腹時には差異はないが,糖負荷後,術前患者では抑制反応を示し, Roux en Y 吻合群interposition群ともに増加し,Roux en Y吻合群で著明であつた.胸部食道全摘群でも胃が存在するにも拘らずグルカゴン分泌抑制は見られず,むしろ分泌増加を来した.この事実は,迷走神経切除がグルカゴン分泌増加を来す一因である事を示している.血中インスリン値は,空腹時においては,差異はないが,糖負荷後,術前患者, Roux en Y 吻合群, interposition 群では術前と同じ60分に頂値を示し, 術前に比し高反応を示したが,Roux en Y 吻合群では,30分に頂値を示し術前に比し低反応であつた.血糖値は,interposition吻合群,Roux en Y吻合群ともに糖尿病型を示した.
経静脈的糖負荷試験では,血中グルカゴン分泌は, Roux en Y吻合群,interposition吻合群ともに抑制された.血中インスリン分泌反応はRoux en Y 吻合群, interposition吻合群の間に差異を認めなかつた.血糖値もRoux en Y吻合群,interposition吻合群に差異を認めなかつた. 以上より,膵グルカゴン分泌反応は経静脈的糖負荷試験でRoux en Y 吻合群とinterposition吻合群に差異を認めず,経口的糖負荷試験により差異を生ずる事は,十二指腸内に存在するグルカゴン分泌抑制ホルモンがグルカゴン分泌に関与している事を示しており,消化管ホルモン分泌の立場から見て,十二指腸を食物が通過する術式がすぐれていると思われる.
キーワード
胃全摘, 膵内分泌機能, 30K抗体, グルカゴン
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