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日外会誌. 82(1): 12-21, 1981


原著

所謂人工血液(Fluosol-DA)を灌流液とする屍体内臓器灌流の基礎的研究

福島県立医科大学 第1外科(主任:本多憲児教授)

阿久沢 和夫

(昭和55年6月6日受付)

I.内容要旨
教室に於る臓器移植研究の一環として,酸素運搬能の優れた人工血液(Fluosol-DA)を潅流液として使用した場合の屍体内臓器潅流保存に関し,雑種成犬24頭を用い検討した.
1)常温潅流犬の全末梢血管抵抗(以下TSPR)は温阻血時間(以下WIT)0分に於ては,Fluosol-DA(以下FDA)潅流犬では,乳酸加リンゲル液(以下LR)潅流犬に比し低値であつた.
2)FDA使用低温潅流犬のTSPRはFDA使用常温犬に比し著るしく減少,殊に潅流液の酸素化時1.5%の割でCO2を附加せる低温潅流犬(CO2附加犬)では更に減少した.WIT 0,30分犬に於ては,LR使用犬,CO2無附加犬,CO2附加犬の間に有意の差は認められなかつたが,WIT 60分犬ではCO2附加犬はLR使用犬に比して低値であり,WIT 120分犬ではCO2附加犬はCO2無附加犬とLR使用犬に比して低値を示した.
3)FA使用常温潅流犬(WIT 0分)では,PCO2,pHともに著変を認めなかつた.FDA使用低温潅流犬(WIT 0,30,60,120分)では,CO2無附加犬に於てはPCO2の低下,pHの上昇による高度のアルカロージスがみられたが,CO2附加犬に於てはPCO2の低下はなく,pHに著変なくアルカロージスの発現はみられなかつた.
4)GOT,GPT,LDHは,CO2無附加犬,CO2附加犬ともに,WIT 60,120分犬では潅流1時間より高値となつたが,WIT 0,30分犬では変化は軽徴であつた.
5)電解質,BUN,クレアチニンはCO2無附加犬,CO2附加犬ともに,WITの長短に関らず著変をみなかつた.

キーワード
臓器移植, 屍体内臓器灌流, 人工血液(Fluosol-DA), 温阻血時間(WIT)

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