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日外会誌. 81(12): 1552-1558, 1980


原著

食道癌治療成績の現況

*) 九州大学 第2外科
**) 島根医科大学 第2外科

奥平 恭之*) , 杉町 圭蔵*) , 上尾 裕昭*) , 夏田 康則*) , 池田 正仁*) , 井口 潔*) , 中村 輝久**)

(昭和55年3月28日受付)

I.内容要旨
食道癌に対する外科治療は近年急速に普及し, その成績は著しく向上している. しかし,消化器癌の中では,いまだに治療成績のもつとも悪い分野である.教室では昭和40年以来,食道癌治療に多くの工夫と改良を行ない,治療成績の向上に努めているのでその概要をここに報告する.
昭和40年より54年まての15年間に当教室に入院した原発性食道癌281例を検索対象とした. このうち切除例は174例(61.9%),非切除例は107例であり,今回はおもに切除例を対象とした.
まず, 癌占居部位別ではCe11例,Iu16例, Im100例, Ei42例, Ea 5例と, Imがもつとも多く,また癌のX線長径では6.1~8cm が54例(31.0%) ともつとも多かつた.術死は全体で9.2% (16/174)であつたが,最近5年間では6.2% (4/65)と減少している. 全耐術例の5年生存率(累積生存率)は15.1%であり,各因子別ではa0123がそれぞれ26.9%,18.6%,18.0%,4%,n01234がそれぞれ32.3%,23.0%,6.5%,4.6%,0 %,stage別では0~ IIで38.7%,IIIで21.8%,IVで4.7%であつた.術前X線長径が4cm 以下の症例では46.2%がa0,53.8%がn0,38.5%がstage II以内であり,61.5%に治癒切除が胞行されており,その5生率は37.0%と良好であつた.
さて,教室では胃管延長法を考案し, さらに術後の長期癌免疫化学療法(PLCC)を昭和47年以降施行してきた.PLCC群の 1,3,5生率はそれぞれ54.7%,27.1%,19.0%であり,対照群 (昭和46年以前の症例)の32%,12%,12%にくらべて有意に治療成績の向上がみられた. 今後はX線長径4cm以下の比較的小さな食道癌の発見に努め, より根治性の高い手術を行ない,術後はもつとも有効な合併療法を行なうことにより,さらに治療成績の向上が期待できるものと確信する.

キーワード
食道癌, 食道癌手術, 早期食道癌, 術後長期癌免疫化学療法

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