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日外会誌. 81(12): 1536-1546, 1980


原著

開心術における自由水クリアランス(CH2O) の意義
-無血および充塡血体外循環を中心として-

福島県立医科大学 第1外科(主任:本多憲児教授)

阿部 俊文

(昭和55年5月1日受付)

I.内容要旨
開心術に際して体外循環前,中,後におけるCH2Oを測定し特に無血体外循環と充填血体外循環の差異について検討した.
症例は無血体外循環42例,充填血体外循環19例計61例を対象とした.滲透圧の測定はFisk滲透圧計を用い永点降下法にて行つた.
1. 体外循環前CH2O値と1日尿量は相関関係(γ=0.65)にあり, CH2O値0~-0.5ml/minを示した症例では尿量500ml/日以下の症例が多くみられた.
2. 体外循環前CH2O値と心胸廓比,肺動脈圧および肺動脈楔入圧の間に相関関係は認めなかつた.
3. 体外循環中におけるCH2O値の変化は無血体外循環では15歳以下は15例中14例,16歳以上は27例中18例においてCH2O値は低下した.CH2O値が正の値を示した症例は3例であつた. これらの症例では術後の利尿は良好であつた.
4. 体外循環中におけるCH2O値の変化は充填血体外循環では過半数(81%)においてCH2O値が低下した.CH2O値が0以上を示した症例はなかつた.
5. 体外循環後のCH2O値の経時的変化をI,II,III,IV型に分類した.無血体外循環では95%がCH2O値を良好に維持したI,II型を示し, 充填血体外循環ではI,II型および術後腎濃縮力低下を示すIII,IV型相半ばした.
6. 体外循環後のCH2O値の推移と体外循環時間との関連では無血体外循環及び充填血体外循環ともに体外循環時間による影響は認められなかつた.

キーワード
自由水クリアランス, 無血体外循環及び充填血体外循環

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