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日外会誌. 81(11): 1476-1490, 1980
原著
血中12種ステロイドホルモンの同時測定法およびその臨床応用
I.内容要旨Pregnenolone よりaldosterone,cortisol, testosterone に至る合成全系の12種ステロイドを1.3mlの血漿で測定する方法を開発した.特別な機械を必要とせず廃棄するRI量も微量ですみ多検体を同時に測定できるなど臨床的にも十分応用できるものである.また微量で測定できることから今迄困難であつた手術侵襲時の経時的変化や幼小児などにも応用でき副腎内の変化を詳細に追究することができる.この方法を臨床に応用し次のような種々の知見をえた. ACTH による副腎刺激は今までいわれてきたような単にcholesterol からpregnenoloneへの転換を促進する作用だけではなく,性ホルモン系をむしろ減少させ鉱質系のaldosterone にも抑制的に働いて糖質系のcortisolを主に産生する.すなわち単に全系が亢進するのではなく糖質系優位の合成へと変化してストレスに対処するものと考えられる.手術侵襲時においてはこれらの変化がさらに著明となり結果的に同化作用より異化作用方向へ変化してその場の侵襲に対処している.手術時には鉱質ホルモンの上昇により水•Na が体内に貯溜するといわれているが, aldosterone はむしろほとんど変化せず水・Na貯溜の要因は別のものを考える必要がある. Cushing 症候群では病因により分画が異り,腺腫では鉱質系の上昇・性ホルモン系の低下を,過形成では性ホルモン系の上昇を認めそれぞれに特徴的といわれる高血圧・低カリウム血症,pure Cushingoid,男性化徴候などの所見と一致した.原発性aldosterone 症では鉱質系全体が増加しており, しかも最後のaldosterone合成段階がさらに亢進して強い高aldosterone 血症の原因となつている. 21水酸化酵素欠損症の単純男性型では糖質系のみが低下し鉱質系の21水酸化酵素に異常を認めない.従つて糖質系と鉱質系それぞれに基質特異性をもつ酵素を分けて考える必要があり,糖質系のみの欠損で単純男性型に,両系の21水酸化酵素欠損で臨床的に重症な食塩喪失型になると考えられた.
キーワード
多種ステロイドホルモン同時測定, 副腎皮質, 手術侵襲, クッシング症候群, 原発性アルドステロン症
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