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日外会誌. 81(11): 1398-1405, 1980


原著

末梢動脈圧波形と循環呼吸動態図による開心術後の心機能の評価

1) 三重大学 医学部胸部外科
2) 岩崎病院 内科

中林 正人1) , 新保 秀人1) , 鹿野 和久1) , 那須 通實1) , 大井 勉1) , 金田 正徳1) , 岡田 行功1) , 水谷 哲夫1) , 三宅 信也1) , 山崎 順彦1) , 矢田 公1) , 草川 実1) , 伊東 経雄2)

(昭和54年12月3日受付)

I.内容要旨
体外循環中の心筋保護法の導入は,乳幼児複雑心奇型や重篤な弁および虚血性心疾患にも積極的な手術を可能とした.他方手術成績の向上には術後の循環呼吸の変動を迅速的確に把握する必要性が増している.そこで自験例について, 圧波形に循環呼吸動態図(動態図を)を加え観察することの有用性を調べた.
対象は体外循環下に開心術の行われた43症例で,研究方法は圧波形に橈骨動脈を用いた.Cuvette法による色素希釈曲線から心拍出量を求め, さらに動脈血ガス分析をほぼ同時期に行った.
開心術後早期にみられる圧波形は後隆波,拡張波,重複波, プラトー波に大別できた.
動態図は, 心係数,拍出係数, TSPR,ETc.最高血圧.PCO2.PH..PO2を項目とすることで,循環系呼吸系の諸値が良好な良好型,循環系諸値が不良で呼吸系の良好な循環不良型,循環系は良好で呼吸系諸値の不良な呼吸不良型,循環系呼吸系の諸値が不良な両不良型の4型に大別できた.
開心術後に得られた圧波形と動態図の関係は以下のごとくで,良好型の動態図の測定回数は,後隆波の47回が最も多く,拡張波は11回,重複波やプラトー波では認めなかつた.循環不良や呼吸不良の動態図の測定回数は,後隆波の22回,拡張波では31回で多く,重複波やプラトー波では23回であつた.両不良型の動態図の測定回数は,後隆波の1回, 拡張波の3回に比して重複波やプラトー波では8回あり, そのいすれもが低心拍出症候群に相当する重篤な状態であつた.
以上の成績から後隆波では動態図において良好型が多く良好な循環の指標であり,拡張波では循環不良や呼吸不良の動態図が多いことから後隆波より劣り,重複波やプラトー波では循環系および呼吸系の重篤な状態を示すことが多く,最も不良な状態の指標であった.従つて圧波形を観察しつつ動態図の改善を計ることは,術後管理上有用であつた.

キーワード
末梢動脈圧波, 循環呼吸動態図, 開心術, 術後管理

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