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日外会誌. 81(10): 1290-1300, 1980


原著

胸壁再建に関する実験的研究

徳島大学 医学部外科学第2講座(主任:井上権治教授)

倉山 幸治

(昭和54年10月23日受付)

I.内容要旨
胸壁腫瘍に対する根治的外科療法により生ずる胸壁の広範囲欠損は重篤な合併症として胸壁動揺ないし縦隔動揺を招来し, 呼吸・循環系に対して悪影響をおよぼし, 生命の危険を招く場合が少くない.著者は,骨セメントを主体とする人工肋骨を作製し,これを雑種成犬の胸壁欠損部へ移植し, 胸壁再建を行った.再建法としては,人工肋骨を単に移植したもの,人工肋骨の両端に側孔を作製し移植したもの,さらには,その側孔を通して人工肋骨を固定縫合したもの3法を行い, それぞれ,A群, B群, C群とした.
X線学的追跡では, A群は早期の生着は良好であつたが, 遠隔期には肋骨断端の骨萎縮が著明であつた.B群では,早期にtube の亀裂,人工肋骨の逸脱がみられたが,生着例については遠隔期では骨膜からの新生骨が生体の骨皮質と連らなり,人工肋骨を固定し,逸脱を防止していた.C群では,再建後から遠隔期まで人工肋骨の逸脱はみられなかつた.
以上3群の生着率は,術後の早期,遠隔期を通じて,C群が最も良好であつた.
各群共に,胸壁の軟部組織の欠損部は線維性の膜で覆われ,人工肋骨の表面を包んでおり,人工肋骨の固定,胸腔の閉鎖に役立ち,代用胸膜の役割を演じていると思われた.
胸郭コンプライアンスは胸壁欠損時には上昇し,人工肋骨移植による胸壁再建直後および遠隔期には正常値へと復帰していた.
以上の実験結果より,著者の考案したtube molding 法による代用肋骨は,胸壁欠損の臨床において十分に応用可能なものと思われた.

キーワード
胸壁再建, 人工肋骨, tube molding法, 骨セメント, 胸郭コンプライアンス

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