[
書誌情報]
[
全文PDF] (5322KB)
[会員限定・要二段階認証][
検索結果へ戻る]
日外会誌. 81(8): 782-790, 1980
原著
上部胆管癌のX線学的所見からみた外科的治療方針
I.内容要旨胆管癌は胆管壁に沿つて浸潤性の発育をする例が大部分であり,術中にその浸潤範囲を把握することは非常に困難である.このため肝管断端に癌を遺残させ非治癒切除となる場合も少なくない.上部胆管癌治療成績向上のためには術前のX線学的所見を十分検討して浸潤範囲を知り,治療方針をたてることが重要である.上部胆管癌のX線学的占居範囲と閉塞部の胆管像を組み合せることにより,治療方針を決定することができる.上部胆管癌のX線学的占居範囲を4群に分けて検討している.すなわち第1群は癌腫が総肝管に認められるもの,第2群は肝門部すなわち肝内胆管第1分枝までのもの,第3群は1側肝内胆管のみ第2分枝以上に浸潤しているが,反対側は第1分枝にとどまるもの,第4群は両側とも第2分枝以上に浸潤しているものである.また閉塞部の胆管像を腫瘤型, U型, V型の3型に分けて,肉眼的辺縁から肝側胆管壁への組織学的浸潤距離との関係について検討した.腫瘤型はその広りは比較的限局的であるが,U型では肉眼的辺縁よりさらに平均7mm,V型では平均24mmも浸潤しており,閉塞部の胆管像よりその広りをある程度把握することが可能である.以上のX線学的所見からみた治療方針は, 第1群の腫瘤型U型は肝門部胆管切除, V型は肝切除を,第2群の腫瘤型は肝門部胆管切除, U型, V型では肝切除を,第3群では肝切除を施行する.第4群は治癒切除は期待できないが,たとえ非治癒切除でも可及的に切除する, というものである.
これらの術式決定にあたつては超選択的肝動脈造影,薬物負荷血管造影, PTPなどで肝動脈, 門脈を十分に描出して,これらの血管造影所見も合せて検討する必要がある.
キーワード
上部胆管癌, 上部胆管癌X線学的占居範囲, 肝門部胆管癌, 肝切除術, 肝門部胆管切除術
このページのトップへ戻る
PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。