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日外会誌. 81(8): 714-723, 1980
原著
肺癌所属リンパ節の免疫応答能
-病期別,組織型別, 部位別からみた差異-
I.内容要旨肺癌患者の所属リンパ節の免疫応答能を証明するために, T細胞の割合, Phytohemagglutinin (PHA)反応, Concanavalin A (ConA)反応, lgG-Fc リセプター陽性T細胞の割合, HLA抗原につき免疫学的に検索し,病期別,組織型別,所属リンパ節の部位別からみた差異を検討した.対象症例は肺癌30例で,病期別ではstage Iが9例, stage IIIが21例である.組織型別では扁平上皮癌17例,腺癌10例,未分化癌2例,粘表皮癌1例である. 所属リンパ節はその存在位置よりgroup 1,肺内,肺門リンパ節群, group 2,分岐部リンパ節群, group 3,縦隔リンパ節群の3群に大別した. 尚対照として6例の良性疾患患者より採取した胸腔内リンパ節を使用した.
結果:T細胞の割合,PHA反応,ConA反応はstageの進行につれて低下し,stage Iリンパ節とstage IIIリンパ節間,及びstage Iリンパ節と転移陽性リンパ節間には統計的有意差がみられた.またstage Iリンパ節の値は対照リンパ節の値と大きな差異はなく,十分な免疫能力を保持していたのに対し, stage IIIリンパ節は転移陽性リンパ節と同程度の低値しか示さず,廓清に際し温存する意義は薄いと考えられた.
組織型別では腺癌においてT細胞の割合,PHA反応,ConA反応とも高値が得られ,他の2組織型とは異なつたリンパ節への刺激を示唆しているように思われた.
リンパ節を所属部件別にみると, T細胞の割合は腫瘍に近いものほど高く, 近接効果がみられたが,PHA, ConA反応ではその効果は認められなかつた.
IgG-Fc リセプター陽性T細胞は抑制T細胞との関連において注目されているが,その割合は肺癌患者ではリンパ節,末梢血ともに健常者末梢血に比べ有意に上昇していた.
肺癌患者ではリンパ節リンパ球と末梢血リンパ球との間にHLA-A,HLA-B抗原の差異はなかつたが,健常者に比べるとA,B両抗原の同定されないBlankの出現する頻度が高い傾向にあつた.
キーワード
肺癌, 所属リンパ節, T細胞, mitogen response, HLA抗原
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