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書誌情報]
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日外会誌. 81(6): 527-536, 1980
原著
直腸癌根治術後の予後に関する病理組織学的研究
I.内容要旨従来,直腸癌の予後判定法や病期分類, Stagingでは無視されてきた病理組織学的因子のいくつかについて検討した.対象は196症例の治癒切除標本に限定し,組織学的各因子所見における5年生存率を求め,各因子相互の関係を論じた.
まず, Dukes分類による5生率はAが80%,Bが58.5%,Cは34.7%であつた.組織学的にみた深達度ではmとsmの癌8例にはリンパ管侵襲(ly),リンパ節転移(n)はなく, 5生率は100%であつた.pm癌でn(+)のものは全症例の9% (18例) で,その5生率は44%であつた.この値はDukes BとCの中間にあたる.pm癌の50%にリンパ管侵襲が認められ,n(+)は32%にみられた. 従つて,深達度が深まるにつれてリンパ節転移が多くなり, 5生率が低下することは明らかである.次に,癌の分化度と5生率の関係をみると,高分化癌68%,中分化癌49%,低分化癌33%,未分化癌0%であつた.粘液癌の5生率は54%で比較的良好である.分化度が低くなるにつれて予後が悪くなる原因としては,深達度よりもリンパ節転移により高い関連を示す結果がえられている.血管侵襲(v)は中分化癌に高頻度にみられ,粘液産生の著しいものほど低率であつた.
V とly とは関係なく,v (+)の5生率は29%,ly(+)の5生率は41%,v (+),ly(+)のそれは22% となった.なお,v (+)はpm以上の壁深達度を示す癌に多く(27%)みられた.
浸潤度と5生率の関係は,α型が73%,β型が53%,γ型が39%であつた.α型はlyもvも侵襲率が少いのに対してγ型はly(+)の傾向が強い.
間質反応では線維性増殖の強いものの5生率は52%で,反応の弱いものと比べて有意差なく,小円形細胞浸潤(rc)が強いものの5生率は66%で,弱いものの47%より良好であつた.しかもrcが強いとly(+),v (+)であつても5生率は50%以上の良い成績となつている点が注目される.逆に,v (+)で小円形細胞浸潤が少いと5生率は23%と低い.以上によりv,浸潤度,n,分化度,ly,深達度,rc の順に予後への影響が大きい.
キーワード
直腸癌, 局所再発, 転移, 脈管侵襲, 間質反応
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