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日外会誌. 81(6): 468-480, 1980
原著
ハプトグロビン投与の体外循環時の高度ヘモグロビン血症に及ぼす影響
I.内容要旨開心術における体外循環によってひき起こされる溶血は術後の種々の合併症の原因と考えられてきた.血管内溶血によつて生じた血漿中の遊離へモグロビン(Hb)は生理的な過程として血漿に含まれるハプトグロビン(Hp)と結合しハプトグロビンーヘモグロビン複合(Hp-Hb complex) を造る. ヒト血漿から単離精製されたHpの投与は遊離Hbによる術後合併症を予防し得ると考え,実験的, 臨床的に効果および安全性につき検討した.
雑種成犬12頭を用い120分の体外循環を行なった.6頭の体外循環充填液中に精製Hp を投与し次の結果を得た. (1) Hpの投与によりHbの尿中および腹水中の排泄を防止できた. (2) 組織学的検討で肝および腎の血鉄症を防止することができた.
臨床例での体外循環中および術後の投与では次の結果を得た. (1) Hpの投与により全例でHb尿を予防または消失せしめることができた. (2) Hb尿の防止または消失は溶血によつて生じた遊離Hbが投与したHpと極めて速やかにかつ強固に結合する結果であることが, 遊離Hp,遊離Hb,Hp-Hb Complexの分別定量で確認された. (3) Hp-Hb Complexは肝で代謝されるが,Hpの投与により大量のHp-Hb Complexを生じた場合でもGOT,GPT等の血清酵素は他の開心術例と同様の推移を示し,新たな肝障害は生じなかつた. (4) 腎機能の指標となる血清クレアチニン値は非投与例に比較し低値に止まるものの有意差を見るには至らなかつた. (5) Hp の投与により低血圧,アナフィラキシー等の副作用を呈した症例はなかつた.
キーワード
体外循環, ハプトグロビン, 分別定量, ヘモグロビン血症, ヘモグロビン尿症
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