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日外会誌. 81(6): 462-467, 1980


原著

胃の十二指腸開口異常
-Kissing ulcerと微小粘膜癌を合併した症例-

*) 川口工業総合病院 外科
**) 東京医科歯科大学 第2外科
***) 東京医科歯科大学 検査部病理

大島 昌*) , 中原 秀樹*) , 今城 眞人*) , 栗栖 茜*) , 長島 道夫**) , 邑山 洋一**) , 具 栄作**) , 浅野 献一**) , 青木 望***)

(昭和54年9月10日受付)

I.内容要旨
48歳, 男性, 胃レ線検査で胃体中央部より近位側に十二指腸がほぼ直角に開口する変形胃を発見した.開口部は広く胃の拡張は認められなかった.内視鏡検査でも開口部と小弯に潰瘍は発見出来なかつた.10カ月後に空腹時の上腹部痛,吐血,下血が出現して来院した.精査の結果,出血源は開口部の前・後壁に発生したKissing ulcerであつた.DIC検査で総胆管が正中側に変位していた. 変形胃を発見してから1年後に出血性胃潰瘍の診断で開腹した.胃は縮小し,胃と十二指腸は寧ろ鈍角に開口していた.開口部はEC接合部から5cm下方で外径は3cm,開口部に接する胃前壁漿膜面に瘢痕を認めた.後壁は膵に癒着していた.右胃動脈は手術時に確認出来なかった.肝分葉を認めた.癒着を剝離して潰瘍を含めた広範囲胃切除術を行った.切除胃の肉眼的所見では開口部の前壁中央に3x7mmのU1-IV, 後壁に潰瘍搬痕を認めた. 2つの潰瘍は互いに独立してその間に線状潰瘍を認めなかつた.蝸牛殻旋回に由来する胃変形を除外するために幽門洞短縮のないことを組織学的に検査した.幽門洞短縮は小弯に発生した線状潰瘍の遠位側におこる病変であるから,切除胃の開口部を中心に半連続標本を作製して, 1) 小弯に線状潰瘍が存在するか, 2) 幽門腺と胃底腺の境界に相当する中間帯の位置について調べた.検査結果:1) 小弯に潰瘍瘢痕はなかつた.2) 幽門腺領域は開口部の全周に互つて存在した.幽門腺領域の短縮と中間帯の幅の縮小は前壁潰瘍の部位にのみ認められた.小弯において胃底腺と十二指腸腺が異常に接近する所見を認めなかつたので, 胃変形は蝸牛殻旋回に由来する病変ではないと判断した.右胃動脈を確認出来なかつたことと肝分葉の存在を考えて胃十二指腸開口異常と表現したが,観点を変えると洞部大弯の憩室様な嚢胞状突出による胃変形とも判断出来た.更に検討したいと考えている.前壁潰瘍から3cm離れた部位に直径1.5mmの微小粘膜癌を発見した.高分化型の管状腺癌であつた.

キーワード
胃の十二指腸開口異常, kissing ulcer, 微小粘膜癌

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