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日外会誌. 81(5): 407-415, 1980
原著
急性胃潰瘍(幽門前庭部)における胃液分泌および血中ガストリンの消長に関する研究
I.内容要旨胃の前庭部にみられる急性胃潰瘍の発症の極く初期の病態, とくに胃酸,ガストリン等の分泌と,病変の進行状態との関連等については,あまり報告をみない様に思われる.そこで本論文では,前庭部の急性胃潰瘍4症例と,対照例として出血性びらん型急性胃炎(潰瘍形成を伴つてない) 1例について,胃X線検査,及び内視鏡検査と同時に血中ガストリン値の定量,胃液基礎分泌量(BAO)の測定を行って,頭記の事項の検索を行つた.
その結果,前庭部に急性胃潰瘍を形成した4症例では,全例,発症の第1日目には強い胃液分泌の亢進がみられ,BAOも極めて高値である. 2日日にもまだBAOの高値がみられるが次第に減少し,3日目以後はBAOは低い値となる.ところが,血中ガストリン値はあまりきわだった変動は少く,発症の早期にはむしろやや低い値であった.
又対照例の1例では,発症早期のBAOの亢進はあまり著明でなく,しかも血中ガストリン値の変動もあまりなかつた.
以上の点からみて,前庭部の急性胃潰瘍の発症の早期には,強い胃酸分泌の亢進が特徴的であった.しかもこれは主として頭相(Cephalic Phase) によるものであると考えられる.おそらく,発症の早期にみられる出血性びらんの上に,この強い胃酸の腐蝕作用が加つて不整形の大きい潰瘍が形成されるものと推測される.
キーワード
急性胃潰瘍, ガストリン, 胃液分泌, BAO
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