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日外会誌. 81(4): 299-305, 1980
原著
肺癌におけるSleeve Lobectomy,とくに術式と術後問題点の検討
I.内容要旨我々はこれまで,肺疾患36例に対して気管や気管支の再建を行つてきたが,本稿においては,それらのうちの肺癌24例におけるSleeve Lobectomy(以下SL) の術式と術後問題点につき検討した.
年齢42~73歳の肺癌患者に対してSLを行つた.組織型は扁平上皮癌17例,腺癌6例,転移性肺癌1例であり,病期はI期4例,II期3例, IlI期16例であつた.気管支再建は,すべてchromic catgut あるいはDexon 等の吸収性縫合糸による連続縫合で行い, 24例中6例に対しては,肺動脈の形成術も併せ行つた.
以上の症例に対して,気管支鏡検査を術後1週から3年2月の間に1回以上行い,術後の気管支造影および肺動脈造影等によつて再建後の吻合状態を検索した. また術前術後の肺機能検査成績の比較も行つた.
24例中術後1年2月~ 2年10月の間に6例が死亡しており, うち4例が癌死し,そのなかには術中肺動脈再建も併せ行つたものが3例あつた.術式に関しては,気管支全周を外側から,吸収性縫合糸を気管支壁が全層に通して縫合したものに術後の吻合部をめぐる合併症が少なかつた.
SLにより再吻合した肺の機能は,肺動脈再建も併せ行つたものでも, 術後早期には一時的な血流分布の低下がみられるものの,術後5週には残存肺容量に見合つた回復がみられた. SL術後は, 術直後から明らかな機能を有すると共に,遠隔時には通常の肺葉切除後の残存肺におけると変りない機能を有することが知られた.
以上のように,肺癌症例に対するSLは,普通の肺葉切除と合併症や予後,さらに術後肺機能成績のうえからも遜色がなく,肺組織温存のために積極的に行うべきものと考えられる. しかしながら, SLにおいて肺動脈形成を併せ行う症例では,術後十分な後療法が必要であると考えられる.
キーワード
肺癌, Sleeve Lobectomy, 肺動脈形成術, 術後合併症, 術後肺機能
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