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日外会誌. 81(3): 247-255, 1980


原著

閉塞性黄疸兼膵外分泌障害時における胃酸分泌についての実験的研究

東北大学 医学部第1外科(主任:佐藤寿雄教授)

佐々木 巖 , 関根 毅 , 亀山 仁一 , 桃野 哲

(昭和54年7月13日受付)

I.内容要旨
閉塞性黄疸と膵外分泌機能障害が同時に存在する時の胃酸分泌の病態を知る目的で, Heidenhain pouch 犬を作成し,各々5頭ずつ胆管結紮および胆管・膵管同時結紮の2群に分けて,酸分泌量,血清ガストリン値および血清セクレチン値について検討した.食餌剌激による酸分泌量は胆管結紮および胆管・膵管同時結紮とも術後2週頃より増加の傾向を示し, 胆管結紮では4週後に術前の330% と最高値を示したが,胆管・膵管同時結紮では5週後に術前の480%とさらに著しい増加を示した. また, 術後2~5週までの24時間酸分泌量の平均を各々の例についてみると,胆管結紫では160~586% の増加率で, 5頭中3頭に有意の増加を認めたのみであったが,胆管・膵管同時結紮では199~564%の増加率で5頭全例が有意の増加を示し,胆管結紮のみの場合に比し,胆管・膵管同時結紮では胃酸分泌亢進はより著明であった.空腹時の血清ガストリン値は,両群とも術後各週の推移においては一定の傾向を認めなかつたが,食餌刺激による血清ガストリン値は, 両群とも刺激後180分値まで術前に比して低値を示し, ガストリンの産生ないし放出が抑制されることが確認された.血清セクレチン値は,胆管結紫では空腹時および食餌剌激時とも術前に比して有意の差は認められなかつたが,胆管・膵管同時結紮では空腹時および食餌刺激時とも著明な高値を示し,酸分泌量の増加率との間に正の相関が認められた.胃,十二指腸潰瘍の発生は両群とも5頭中2頭(40%)に認められた.
以上の成績から,胆管結紮および胆管・膵管同時結紮における胃酸分泌亢進の発生にはガストリンおよびセクレチンが関与することは少なく,ガストリン以外の胃酸分泌剌激物質が関与する可能性が示唆された.また,胆管・膵管同時結紮における高セクレチン血症は酸分泌亢進と十二指腸における酸中和能の低下による二次的なものであると推定された.

キーワード
胃酸分泌, 胆管結紮, 膵管結紮, 血清ガストリン, 血清セクレチン

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