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日外会誌. 81(2): 113-118, 1980


原著

A-C Bypass術後の長期予後

*) 済生会宇都宮病院 心臓血管外科
**) 産業医科大学 外科II

石倉 義弥*)**) , 木曽 一誠*) , 小田桐 重遠*) , 加藤木 利行*)

(昭和54年6月8日受付)

I.内容要旨
昭和47年以来,年齢27~69歳(平均52.4歳)の男子23例, 女子4例の冠動脈疾患に行なったA-C Bypass術の症例を術後14~85カ月(昭和53年末まで)のfollowupを行なった.
狭心症例11例,心筋梗塞症例16例でそのうち7例は心室瘤を合併しており,これら症例は,同時に心室瘤切除も行なつている.
冠動脈の一枝病変群は8例,二枝病変群は15例,三枝病変群は4例であり,これに対し1枝Bypassを行なったもの14例, このうち5例は同時心室瘤切除を, 2枝Bypassは10例に, このうち2例は同時心室瘤切除を, 3枝Bypass術は3例に行なつた.
全例saphenous vein graftを使用し,全Bypass graft本数は43本であつた.
術後1ヵ月後の検査で, graftの完全閉塞せるものは6本(開存率86%)であつた.
graft閉塞例は5例で,いずれも,高脂血症,糖尿病,高血圧症又は脳血栓症を合併していた. 心機能面では, 心筋梗塞群では, E.F.及びCIで, 術後より改善されていたが, 狭心症群では, 不変であった.症状は,狭心痛残存が, graft閉塞例のうち2例に見られた他は改善が見られ, NYHA分類においてもI度に改善されたものは77.7%で, 6例のみがII度に留つた.遠隔死亡は, 1年10カ月及び2年2カ月で夫々1例づつ認めたが,死因はいずれも心外因子によるものであつた.
再発例は,殆んど正常であった他の冠動脈に新たな閉塞を来し,夫々13カ月と45カ月に新梗塞を来したもの2例を認めた.術後の復職状況は, full time の就職は51.8%,軽作業18.5%で,狭心痛残存,再発等で就職していないものは22.6%であった.運動能も発症前に近い状態まで改善されたものは60%あり,予後は比較的良好であるが,狭心痛残存や再発例, graft閉塞例は,糖尿病,高脂血症,高血圧などを合併するもの多く, これらの管理が充分必要である.

キーワード
虚血性心疾患, A-C Bypass術, 長期予後, 社会復帰

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