[
書誌情報]
[
全文PDF] (10832KB)
[会員限定・要二段階認証][
検索結果へ戻る]
日外会誌. 81(1): 61-77, 1980
原著
全結腸切除・直腸粘膜切除・回腸肛門吻合術とその早期の成績
I.内容要旨目的:大腸粘膜の完全なる摘除を行い,かつ自然肛門機能の温存とする全結腸切除・直腸粘膜切除・回腸肛門吻合術(回肛吻合術)は大腸腺腫症・潰瘍性大腸炎の理想的術式であるが,今日まで満足しうる術式が確立していない.本術式が不成功に終る原因は術後早期の合併症(骨盤内膿瘍形成,縫合不全など)と長期的な排便機能の障害である.私共はこれらの問題を解決すべく臨床的,実験的研究を行つて来たが,最近に至りほぼ満足しうる成果を得たので,早期の成績を報告した.
術式:術式の要点は次の三原則である. 1) 骨盤内感染症の予防のために厳格なる術前・術中の腸内細菌叢の処置,腸管の非開放的手技,直腸筋筒内の有効なドレナージ,一時的ループ回腸瘻を行う. 2) 排便機能の温存のために, 仙骨岬直下より粘膜剝離を行い長い筋筒を作ることや貯留嚢に関する工夫を行う,即ち回腸肛門吻合形式に関して,貯留嚢を作らないで端々に吻合する方法(A-1)順蠕動性側々吻合による貯留嚢を高位におく端々吻合の方法(A-2),逆蠕動側々吻合(パンタロン方式)として側端吻合をおく方法(B)の三つの方法を行つた.3) 直腸粘膜の完全(又はほぼ完全な切除)のための手技として, 直腸内副子法,歯状線直上までの剝離法などを考案した.
成績:大腸腺腫症11例,潰瘍性大腸炎2例に本術式を行つた.A-1 法5例, A-2法2例, B法4例であり,この中5例において一時的回腸瘻を閉鎖し6カ月以上追跡することができた.合併症は,骨盤内感染症3例,イレウス3例,出血1例にみられたがいずれも治療しえた.手術死亡例はない.排便回数は術後次第に減少し, 1日5回以下となるまでの期間は, A-1 法(2例)で7週及び9週, A-2法(2例)で30,20週, B法(1例)で7週であつた.便は水様から半有形状となる. 2例に夜間に軽度のもれがあるほかは失禁はない,社会復帰は良好であることは中学生,高校生の二人はそれぞれスポーツ選手に復帰したことでもあきらかである.
キーワード
全結腸切除兼直腸粘膜切除術, 大腸全摘術, 回腸肛門吻合術, 大腸腺腫症, 潰瘍性大腸炎
このページのトップへ戻る
PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。