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日外会誌. 81(1): 55-60, 1980


原著

膵管に破裂穿孔したFibromuscular Dysplasiaによる腹腔・脾動脈瘤の1例

東京大学 第2外科
*) 越谷市立病院 内科
**) 越谷市立病院 消化器外科

村田 宣夫 , 丸山 雄二 , 田中 洋一 , 幕内 雅敏 , 梶浦 直章 , 橋本 大定 , 牛山 孝樹 , 多田 祐輔 , 和田 達雄 , 麻生 亮一*) , 一瀬 裕**)

(昭和54年5月18日受付)

I.内容要旨
症例は42歳男性.上腹部激痛およびそれに引き続いて起こる下血が見られ,血管造影,内視鏡的逆行性膵管造影により,腹腔・脾動脈瘤が膵管に破裂していることが判明した.手術は動脈瘤切除,膵体尾部切除,脾摘除が施行された.肝血流は胃十二指腸動脈を介する側副血行により保たれており,血行再建は行なわなかつた.切除標本の組織学的検索で動脈瘤にはfibromuscular dysplasia (medial fibroplasia) の所見が認められた.術後,癒着性イレウスになり癒着剝離術を施行したが以後は経過順調であつた.
腹腔動脈瘤は現在までに欧米及び本邦において文献上53例報告されている.病因として動脈硬化性のものが近年の報告では多く, fibromuscular dysplasiaによる腹腔動脈瘤の報告は見当たらない.
腹部内臓動脈瘤が膵管内へ破裂し消化管出血をきたすことは極めて稀であるが,消化管出血の診断に際して動脈瘤の破裂も念頭におく必要がある.

キーワード
腹腔動脈瘤, 脾動脈瘤, fibromuscular dysplasia

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