[書誌情報] [全文HTML] [全文PDF] (1118KB) [全文PDFのみ会員限定]

日外会誌. 126(6): 601-603, 2025

項目選択

定期学術集会特別企画記録

第125回日本外科学会定期学術集会

特別企画(1)「医療の質と医療安全:人口減少時代の外科医療の集約化と均てん化」 5.地方都市における小児外科診療の集約化と均てん化の取り組み

岩手医科大学 医学部外科学講座

藤野 順子 , 小山 亮太 , 鈴木 信 , 佐々木 章

(2025年4月10日受付)



キーワード
小児外科診療, 均てん化, 少子化, 人口偏在, 地方都市

<< 前の論文へ次の論文へ >>

I.はじめに
少子高齢化は,今後の外科診療の在り方に変更を余儀なくさせる.各医療機関では症例数の減少を危惧し,ここ数年にわたり医療の集約化について議論が重ねられているが,さまざまな障害により実行には至っていないのが現状である.
われわれの施設がある岩手県は北海道に次ぐ県有面積を有し,地理的には県の東西に縦走する北上高地,奥羽山脈のため山岳地帯を多く抱えている.日本小児外科学会に登録の小児外科施設は県央の北上盆地に限られており,特に冬期の沿岸地方や山岳地方からの移動は道路の凍結等で困難なことがある.また2023年の年少人口は119,927人で毎年4,000人以上の減少を辿る.沿岸地域の年少人口は県全体の2割程度と少なく,医療経済面からも人材面からも小児外科医を常勤させることは難しい.こうした中で当科が行っている岩手県の小児外科診療の集約化と均てん化への取り組みが参考になればと思い報告する.

II.目的
当科での取り組みと診療体制について調査し,集約化と均てん化の両立について考察する.

III.方法
2023年4月からの1年間について,小児外科の診療体制および各地域からの紹介内容について調査し,地域における役割について検討する.小児外科診療を大きく四つに分け,①新生児診療②3次救急③2次救急④一般小児外科診療(待機手術症例など)とし,各症例数,紹介数,他科との協力体制,当科の地域病院への診療協力体制などについて調査し報告する.

IV.結果

1)診療体制
小児外科指導医1名,専門医2名で24時間365日緊急電話に対応し,常に受診対応する体制を維持していた.年間手術症例数159例,2次救急としてCommon Diseaseへの緊急手術は虫垂切除術8例であった.高次機能としての新生児緊急手術20例,3次救急手術1例であった.また,小児外科診療の均てん化のために,指導医が当院より130kmを超える遠方の2次救急施設を含む5施設で月1回,地域医療支援として外来診療を行っていた.全初診紹介件数92人中,当該施設からは47人(51%)の紹介があった.紹介症例で手術を必要としたのは72人(78%)で,主な疾患は鼠径ヘルニア36例であった(図1).

2)協力体制
小児外科指導医は5施設,月1回の外来診療応援であり,それ以外の時間およびその他の施設はICTを駆使して各小児科施設と連携していた.この情報システムは『いわて情報ハイウエイ』という県内の大学と県立病院などの主要施設とを24時間365日結ぶ情報ネットワークシステムで,2007年に小児科医数が全国最低になったのを受け,県主導で本格的に導入されたものである(図2).本学小児科はこのシステムを用いて地域の主要病院と平日毎朝,症例の情報交換を通じて診断や治療方針の相談を行っている.さらに緊急症例に関しては24時間365日,地域病院からの個別相談を受け入れており,そこで提示された小児外科関連疾患に対しては当科に遅滞なく紹介,相談されていた.
高度医療に関しては,岩手医科大学には県との協力で岩手県総合周産期母子センターと岩手県高度救命救急センターが設置されており,新生児症例・3次救急の急性期医療の集約化に寄与していた.新生児医療に関しては,県が妊婦・胎児情報を各市町村と県内全域の周産期医療機関をインターネットで結び,各施設間での情報共有するシステム『いーはとーぶ』を構築している.このシステムにより各地域の妊婦・胎児の情報は岩手医科大学の電子カルテの端末で閲覧可能であり,異常妊娠の紹介・相談,妊婦搬送を行う際には事前に情報収集ができスムーズに受け入れが行われており,小児外科関連の新生児症例も滞りなく新生児科から相談がなされ情報収集・紹介がされていた.3次救急に関しては,救急科と協力しており,小児外傷などで小児外科領域のものに関しては救急搬送前に連絡が入り共に診療にあたっていた.

図01図02

V.考察
岩手県では小児外科疾患を診療可能な施設は中心都市部に限られており,一部の遠隔地には小児外科指導医が赴き地域医療を行っていた.当該遠隔施設からの手術症例は全紹介の50%を超えており,地域の小児外科診療の均てん化にも寄与していると考えられた.
いわて医療情報ネットワークにより岩手医科大学と他の県立病院は24時間365日情報交換可能で,小児外科疾患の相談も滞りなく行われていた.また3次救急に関しては救急科,小児科,新生児科との連携がなされており高次医療機関としての機能を果たしていた.特に,新生児症例数は日本小児外科学会の年次報告で症例数の多い施設の上位3分の2に入っており,症例の集約化がなされていると考えられた.

VI.おわりに
広大な医療圏を持つ当施設は高次医療機関として症例の集約化だけでなく,小児科と協力して地域の小児外科診療の均てん化を図り24時間365日支える体制を取っていた.

 
利益相反:なし

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。