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日外会誌. 126(6): 585-587, 2025

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印象記

第142回ドイツ外科学会に参加して

金沢大学附属病院 消化管外科

真智 涼介



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I.はじめに
このたび,日本外科学会よりドイツ外科学会とのExchange Traveling Fellowにご選出いただき,2025年3月に開催された第142回ドイツ外科学会(DCK 2025)への参加および発表の機会をいただきました.また,DCK参加に先立ち,ケルン大学病院での臨床研修も体験させていただきました.本稿では,この貴重な体験から得た学びと気づきを,自身の視点からご報告いたします.

II.ケルン大学病院での研修
初めてのドイツ滞在は,ライン川の古都ケルンから始まりました.中央駅を出てすぐにそびえ立つ大聖堂の荘厳な姿に圧倒され,この地での日々の始まりを実感しました.
今回のフェローシップでは,DCK発表に加えて,希望する医療機関の見学の機会をいただき,ケルン大学病院を訪問しました.病床数1,500を超える同院は,ドイツ屈指のハイボリュームセンターであり,外科部門を率いるProf. Christiane BrunsはDCK 2024会頭を務められたご高名な外科医です.当科とは以前より稲木紀幸教授が交流されており,そのご縁により2023年度は当科の木下淳先生が留学されました.私が訪問した期間は,2024年度に留学されていた林沙貴先生・林憲吾先生ご夫妻が在独中で,研修だけでなく生活面でも大変お世話になりました.
手術は選択希望制で,私は主に消化管領域を中心に助手として術野にも参加させていただきました.中でもCARDIA trial(Siewert Ⅱ型の食道胃接合部癌におけるtransthoracic esophagectomyとtranshiatal extended gastrectomyを比較する国際多施設間前向きランダム化試験)対象症例のIvor-Lewis手術は印象的で,展開,剥離,切離,結紮,縫合などの基本手技の共通性や非言語的な協調から,手術における国際的な共通理解の存在を感じました(図1).ドイツを含めて欧州では,胸部中部食道癌症例に対してもIvor-Lewis手術が選択されており,上縦郭リンパ節郭清を必須とする本邦とは異なる戦略であり,日本との相違を実感しました.
手術以外にも,2024年に開設された医療技術の教育・研究拠点であるCeMIT(Center for Medical Innovation and Technology)を見学しました.そこには,13台のVRステーションや,手術支援ロボットシステムHugoによる教育設備を見学・体験し,医療教育と技術開発が融合する現場に強い刺激を受けました.

図01

III.ドイツ外科学会(DCK2025)での学び
研修を終えたのち,学会会場のあるミュンヘンへと移動しました.ミュンヘンは,かつてバイエルン王国の中心として栄えた歴史都市であり,オクトーバーフェストの開催地としても知られるドイツビールの本場です.さらに,多くのグローバル企業が集まる産業都市としての一面も持ち,歴史と文化,温かい人々に彩られた魅力的な街でした.
私は“Effizienz und Lernerfahrung in der robotischen Chirurgie(英訳:Efficiency and learning experience in robotic surgery)”というセッションで,“Upper Gastrointestinal Cancer Surgery using the hinotori Surgical Robot System made in Japan”と題し,日本製ロボットhinotoriの紹介をはじめとし,上部消化管領域における手術と短期成績を紹介しました(図2).セッション内外で反響もあり,現地関係者の関心の高さを感じました.ちなみに,hinotoriを開発したMedicaroid社(神戸)はデュッセルドルフにも拠点を構え,2025年3月にCEマークの申請を行いました.今後,欧州での展開も期待されています.
自身の発表以外では,ドイツ外科学会と日本外科学会によるジョイントセッション「Pediatric Surgery – Recent developments in training and centralization」を聴講しました.小児外科分野における教育体制や集約化の現状について,日独の専門家による活発な発表と議論が行われ,両地域の取り組みの違いや共通課題が浮き彫りになりました.また,欧州内視鏡外科学会(EAES)とドイツ外科学会のジョイントセッションでは,EAESの役職を担っておられる当科の稲木紀幸教授やイタリア・ミラノのProf. Luigi Boniらが登壇し,低侵襲外科の最新動向について講演されました.いずれのセッションも多くの聴衆を集め,国際的な関心の高さと学会全体の熱気を強く感じました.
学会期間中は発表や聴講以外にも貴重な交流の機会に恵まれました.初日の夜には田尻達郎教授,内田広夫教授,荒桃子先生と歴史あるビアホールで夕食をご一緒し,小児外科や成人外科の将来について伺う中で,緊張もほぐれ有意義な時間を過ごせました.その交流の場で,日本外科学会主催の体験型ワークショップ「オペスル」の実行委員にお誘いいただけたことも光栄でした.2日目のGala Dinnerでは稲木教授とともに参加し,各国の外科医と交流することができ,言語の壁を越えて医学を通じて繋がれたことは忘れ難い経験となりました(図3).

図02図03

IV.おわりに
当科には,ドイツで学ばれた諸先輩方の歴史があり,その姿に触発されて今回の挑戦に至りました.今回の研修と発表を通じて得た経験は,今後の診療・教育に活かし,次代へと繋げていくべき財産であると感じています.
最後に,このような貴重な機会を与えてくださった日本外科学会国際委員会,ケルン大学病院の皆様,そして金沢大学消化管外科の先生方,特に終始ご指導くださった稲木紀幸教授に,心より感謝申し上げます.

 
利益相反:なし

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