日外会誌. 126(6): 581-584, 2025
手術のtips and pitfalls
低侵襲アプローチによる肺区域切除におけるtips and pitfalls
単孔式胸腔鏡手術における肺区域切除の手術手技
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東京都立墨東病院 呼吸器外科 江花 弘基 |
キーワード
低侵襲手術, 単孔式胸腔鏡補助下手術, 肺区域切除
I.はじめに
近年の医療機器の進歩,ならびに腫瘍学的なエビデンスの構築により1),今後,ある一定の条件を満たした早期小型肺癌に対して低侵襲アプローチ(Reduced-port thoracic surgery: RPTS)による肺区域切除が増加することが予想される.当科で行っている単孔式胸腔鏡手術(Uniportal VATS)による肺区域切除につき,手術手技中心に述べる.
II.当院におけるRPTS
当院ではUniportal VATS2)もしくは二孔式ロボット支援胸腔鏡下手術(DRATS: dual-portal robot-assisted thoracic surgery)3)により解剖学的肺切除を行っている.肺区域切除における血管や気管支の剥離においては,鉗子の可動域の勝るロボット手術が有効と考えるが,現在の診療報酬の点からUniportal VATSを選択することが多い.
III.手術手技
以下に当院におけるいくつかのUniportal VATS肺区域切除の際の手技を述べる.
(1)エネルギーデバイスによる肺静脈の剥離(図1)
肺門(右S2の場合には葉間,下葉の場合には尾側)の肺実質をエネルギーデバイスにて切離し,出来るだけ末梢まで肺静脈を剥離する.細い枝からの出血はソフト凝固が有効である.
(2)気管支鏡と近赤外線モードを用いた気管支同定(図2)
切離予定の気管支に気管支鏡を挿入し,近赤外線モードを利用することで,気管支鏡のライトが強調され,切離すべき気管支が同定しやすくなる.
(3)ICGによる区域間の同定とスネーク鉗子を用いた区域間の切除(図3)
ICG: 0.25mg/kgを静注(ヨードアレルギーの場合には禁忌)し区域間を同定する.自動縫合器を使用する際のコツとしてスネーク鉗子で切離ラインを把持し,鉗子の下に自動縫合器を通すことで肺が厚い場合でも切離可能となり,また切離する方向を調整しやすくなる.
(4)肺漏の制御(図4)
区域間の切離において肺漏の残存は,胸腔ドレーン抜去の遅延,膿胸の発生などを惹起する可能性があり,その制御は重要である.当科では,切離断端に肺漏を認めた場合にはソフト凝固で焼灼し,フィブリン糊を塗布している.フィブリン糊においては,A液(フィブリノゲン),B液(トロンビン)を同時にスプレーするのではなく,まずA液を塗布し,ノットプッシャーなどを用いて組織に擦り込み,次にB液を塗布し擦り込んでいる.自動縫合器の切離ラインに気管支と思われる構造物を認めた場合には同部にZ縫合を追加しておくことも遅発性肺漏の回避につながると考えている.




IV.まとめ
当院で行っているUniportal VATSは腹側からのアプローチであるため,S6,上大区,舌区や肺底区などのmajor segmentectomy,ならびにS1,S3などの腹側の区域切除は非常にやりやすい.一方で背側,特にS9やS10の区域切除はやや困難と考える.その際にはポートを追加することも一つのコツとなる.各施設での低侵襲アプローチによる肺区域切除を行う際の一助となれば幸いである.
利益相反
講演料など:ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社,日本メドトロニック株式会社

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