日外会誌. 126(6): 569-572, 2025
手術のtips and pitfalls
Hybrid frozen elephant trunk法のtips and pitfalls
J Graft FROZENIX 4 Branchedを用いた全弓部置換術+Frozen Elephant Trunk法
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国立循環器病研究センター 血管外科 井上 陽介 |
キーワード
急性大動脈解離, Frozen Elephant Trunk法
I.はじめに
A型急性大動脈解離(Type A Acute Aortic Dissection: AAAD)は高い致死率を有する重症の大動脈疾患であるが1),外科治療以外には救命手段がなく,緊急性も極めて高い.AAAD に対する外科治療の基本は人工血管置換術によるエントリー部の切除であり,大半の症例で上行大動脈の人工血管置換術が行われる.しかし下行大動脈の偽腔開存状態は遠隔期の死亡率や大動脈イベントを悪化させるため,下行大動脈偽腔の血栓化およびリモデリングを促進させる治療が求められ,上行弓部置換(Total arch replacement: TAR)に加えて,末梢大動脈にOpen stentgraft を挿入するFrozen Elephant Trunk(FET)法はその解決策として期待されている2).本稿ではJ Graft FROZENIX 4 Branchedを用いたTAR+FET法について述べる.
II.急性大動脈解離における人工心肺確立と工夫
全身麻酔下に胸骨正中切開を行い,上下大静脈脱血,大腿動脈および右腋窩動脈送血により体外循環を確立.全身冷却(25℃)の後,循環停止とし,順行性脳灌流を併用して行う.TAR+FET 法による重篤な術後合併症として脊髄梗塞がある.これを防ぐため必ず下半身循環停止後Open stentgraftの展開時には空気やデブリスをフラッシュアウトすべく大腿動脈から200〜300ml/min 程度血流をおくりながら展開するようにしている.
III.適応と手術方法・注意点
AAADに対するTAR+FET 法の適応は下行大動脈に解離が波及しており,偽腔開存状態にある症例に対して適応とする.J Graft FROZENIX 4 Branchedはカフに特徴があり展開後カフ縫合部が中枢や末梢に極端にずれると非ステント部の狭窄を来たす危険性がある.このため筆者はグラフトを展開してから大動脈壁をトリミングすることで展開された部分でカフを吻合するように工夫している.弓部が極端に狭い症例や,左椎骨動脈が直接起枝しているような症例では無理に一体型(FROZENIX 4 Branched)を使用するのではなく,Open stentgraft単体を使用することもトラブルを防ぐことに寄与する.
IV.まとめ
J Graft FROZENIX 4 Branchedを用いたTAR+ FET法は末梢側吻合の確実な吻合を達成できるだけでなく,循環停止時間の短縮にも寄与する.適切な患者選択,末梢塞栓予防,展開後の大動脈壁トリミングなど画一化された手順を守ることが手術成績の向上のみならず,手術術式の標準化と若手医師への執刀機会の増加につながるものと考える.
利益相反
講演料など:日本ライフライン株式会社,関西胸部外科学会(2025),日本心臓血管外科学会(2025)







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