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日外会誌. 126(6): 554-559, 2025

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GLIM基準による低栄養の診断

帝京平成大学健康メディカル学部健康栄養学科,帝京大学医学部外科学講座 

福島 亮治

内容要旨
GLIM基準は世界の共通言語を目指して策定された低栄養の診断基準である.まず既存の栄養スクリーニングツールを用いて栄養リスクのある患者を抽出し,次に表現型基準(体重減少,低BMI,筋肉量減少)と病因基準(摂取量の低下または吸収不良,炎症または疾病負荷)のうち各1項目以上を満たすことで低栄養と診断される.これはあくまでも低栄養の診断基準であり,合併症発生リスクや予後を一義的に判定するものではない.GLIM基準の普及は,信頼性の高い診断,研究成果や治療法開発などに対する的確な評価や比較が可能となるものと期待される.

キーワード
栄養不良, 低栄養, 栄養評価, 栄養スクリーニング, 栄養アセスメント

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I.はじめに
外科治療において栄養が重要であることは古くから認識されている.しかし,その出発点である栄養状態をどのように評価するかについては,従来から統一した基準は存在せず,外科医の間でもどのように栄養評価するかについての議論はあまりされることはなかった.
2019年初頭に発表されたGLIM基準は,世界的な栄養不良(低栄養)の診断基準を目指して,欧州(ESPEN),北米(ASPEN),アジア(PENSA),南米(FELANPE)の四つの栄養の専門学会が連携し,2015年からの国際協議を経て策定されたコンセンサスベースの診断基準である1).成人に対する基準であり,ビタミン欠乏など特定の栄養素不足などは含まない.その後,多くの検証が行われ,今や概ねセミゴールドスタンダード的な地位を築きつつある2).また,この基準をICD-11に組み込む働きかけも進んでいる.わが国でも,2024年から,回復期リハビリテーション病院における保険請求の際,栄養評価にGLIM基準を使用することになった.今後外科領域を含めて,さらにこの基準の使用が普及していくものと予測される.そこで本稿では,GLIM基準について,その基本概念を中心に述べることとしたい.

II.GLIM基準の概要
まず既存の検証済のスクリーニングツールを用いて栄養リスクの有無を判定し,リスクがある患者に対してGLIM基準を適用して低栄養を診断する2段階方式である.GLIMの診断基準は表現型(体重減少,低BMI,筋肉量減少)と病因(食物摂取不足,炎症/疾病負荷)から構成されており,それぞれ少なくとも一つ当てはまった場合に低栄養と診断し,次に重症度を判定する(図1).低栄養の病因として古典的な食物摂取不足以外に炎症/疾病の概念をとり入れている.なおカットオフ値などを含めての実際の診断手順の詳細はJSPENのホームページをご参照いただきたい (https://www.jspen.or.jp/glim/glim_overview).

図01

III.GLIM基準を使用する意義
栄養評価の方法は様々あり,“この患者さんは栄養不良(低栄養)だね”と言った時に,思い浮かべる臨床像は皆同じではない.外科医220名に行ったアンケート調査結果を示すが,何を基準として栄養状態を評価しているかは様々である(図23).未だ低アルブミン血症者=低栄養と考える者が多いが,現在では血清アルブミン値で栄養評価をすべきでないとされている(後述).“この患者さんは低栄養なので……”と言っても,それぞれ思い浮かべる像が異なると,その後の議論は噛み合わない.そこで,“低栄養”の世界の共通言語=common languageを目指してGLIM基準は策定されたのである.

図02

IV.臨床現場における低栄養診断の誤解――予後予測と低栄養診断は異なる
低栄養があると外科手術後の死亡率や合併症の発生率が高くなることはよく認識されている.しかしながら,死亡率や合併症の発生率が高くなる原因は多岐にわたり,低栄養はそのうちの一要因である.例えば外科領域で比較的よく使用されているprognostic nutritional index (PNI)4)は,幾つかの検査値等を組み合わせて,術後縫合不全の発生リスクを予測するために考案された指標である.その後,縫合不全以外の合併症や死亡率などとの関連があることも指摘されているが,この指標は合併症(縫合不全のおこりやすさ)を予測するもので,純粋に低栄養を診断するものではない.歴史的に栄養評価指標として使用されてきたのは,式にアルブミンが含まれているからであろう.類似した指標(スコアリングシステム)に高齢者向けとされるGeriatric Nutritional Risk Index (GNRI)5),がん患者のGlasgow Prognostic Score (GPS),集中治療におけるNutrition Risk in Critically ill Score (NUTRIC)6)などがある(表1).実臨床において,これらのスコアリングシステムを用いて合併症の発生率などを予測することは重要なことであり,後述する包括的アセスメントの一部と捉えることはできるが,低栄養があるかないかを診断するものではないことは銘記すべきである.これらのスコアリングシステムには,血清アルブミン値をはじめとして,栄養というよりも疾患の重症度に関わる指標が多く組み込まれている.

表01

V.血清アルブミン値を栄養指標としてはいけない
血清アルブミン値は,炎症状態とよく相関するが,BMIや体組成,食事摂取量,あるいは体内のアルブミン合成率との相関が良くないことが報告されている7) 8).一方,予後とはよく相関することが知られており,患者の総合的な重症度をよく表すものと考えられる8).2015年の栄養不良に関するESPENのConsensus Statement9)や,2021年のASPENのPosition Paper10)においても,アルブミンのような内臓タンパクの値は栄養不良のスクリーニングや診断には用いるべきではない(栄養指標[nutrition marker]としない)とされており,GLIMも同様の立場である.

VI.GLIM基準を用いた栄養評価の考え方と手順
1)スクリーニングとアセスメント
栄養治療(栄養療法)の基本的なプロセスはスクリーニング→アセスメント→トリートメントの手順で行うとされている(図3).栄養スクリーニングは,対象者が低栄養リスクを有するかを迅速かつ簡便に評価するプロセスであり,基本的に全ての患者に対して施行すべきものである.
栄養アセスメントは,スクリーニングで栄養リスクありと判定された患者に対し,詳細な臨床情報,身体計測,血液検査,画像診断などを用いて低栄養の有無と重症度,さらにその後の治療のために必要となる詳細な情報を評価する.広義には栄養スクリーニングも含むという考え方もある.検討される指標としては,体重や食事摂取に関する詳しいデータ,その他の詳細な臨床情報,身体所見,体組成,間接熱量測定,血液検査結果などが含まれる.このような詳細なアセスメントは,包括的アセスメント(Comprehensive Assessment),あるいはフルアセスメント(Full Assessment)と呼ばれ,栄養評価のゴールドスタンダードと考えられる.しかし,実臨床でこれをルーチンに行うのは容易ではないため,比較的簡便に低栄養の有無や程度を評価するためのアセスメントツールが開発され使用されてきた.SGA(Subjective Global Assessment),PG-SGA(Patient Generated Subjective Global Assessment),MNA(Mini Nutritional Assessment)は代表的なアセスメントツールである.実質的にこれらのツールはスクリーニングを含んでおり,MNAやPG-SGAのshort formは,スクリーニングツールとして独立して用いられることもある.
GLIMによる低栄養の診断は,スクリーニングを経て行う診断的アセスメントという位置付けで,包括的アセスメントへの第一段階として,まず低栄養の有無と重症度を確定するプロセスと考えると理解しやすい(図4).
2)栄養スクリーニング,栄養リスクとは?
GLIM基準を用いる際のスクリーニングの概念は,“栄養リスクのある者を抽出する”ことである.しかし,栄養リスクという概念も,これまで厳密に定義され十分なコンセンサスが得られているわけではない.一方では,明らかな栄養不良(低栄養)患者を抽出することをスクリーニングとする考え方もあるかもしれない.現在,栄養スクリーニングの概念を明確にすべく,GLIMのワーキンググループ(GLM-WG)で検討中であるが,現時点でのリスクの考え方は図4の通りである.わが国の栄養のテキストブックでは,SGAをスクリーニングツールとして記述しているものが少なくないが,SGAはスクリーニングとアセスメントを一連のものとして行い,最終的に低栄養があるかないかを判断していると考えられる.GLIMを用いる上でのスクリーニングは,明らかな低栄養患者を見つけるのではなく,栄養リスクのある者を簡便に抽出するのだという理解が重要である.

図03図04

VII.外科領域における使用上のポイント
1)スクリーニングツールは何を使用するか
主なスクリーニングツールを表に示した (表2).何を用いるかは,それぞれの施設や病棟の状況に即して使いやすいツールを使用すれば良いが,アセスメントツールを使用すると二重判定となり混乱するので注意が必要である.
2)スクリーニングを省略できる場合はあるか
進行した胃癌や食道癌の患者に明らかな栄養リスクがあることにおそらく異論はないであろう.従って,未だ確固たるコンセンサスが得られた状況ではないが,このような特別な集団ではスクリーニングを省略する選択肢はあるように思われる.なお,ICU患者に対するGLIMの使用に関するガイダンス11)では,事実上スクリーニングは省略されている.
3)リスクは明らかにあるが低栄養と診断されない場合にどうするか
GLIM基準による低栄養の診断は,あくまでもその時点に低栄養が存在するかの診断である.リスクは明らかでも低栄養と診断されなかった場合は,一定期間後に再度GLIM基準を用いて低栄養の診断をすることが勧められる.また,低栄養に陥る前に,予防的に栄養療法(栄養治療)を行うことも十分考慮する必要がある.
4)筋肉量はどうやって評価するか.筋肉量の減少とサルコペニアは異なる.
GLIM-WGによる筋肉量測定のガイダンス12)では,DXA,BIA,CTのいずれかが使用可能でかつ使いこなせていれば,それらの使用を推奨している.一方,GLIMは世界的な基準であることから,これらの機器が調達できない場合も想定し,上腕筋周囲長や下腿周囲長などの身体計測結果や一般的身体所見による判定も可としている.いずれの場合も,浮腫が強い場合,肥満が強い場合は測定が困難となったり,精度が落ちるので注意が必要である.
また,筋肉量評価は,“量”を基準とし,握力や歩行速度などの機能は低栄養の診断には用いない.筋肉量減少+筋力や身体機能低下を示すサルコペニアの評価は,GLIMで低栄養と診断した後にすべきとしている.
5)炎症の評価はどうするか
同じくGLIM-WGによる炎症のガイダンス13)によれば,炎症は臨床的判断を優先して決定する.CRPなどの検査所見は必須ではなく,参考とする基準値は示されているが,補助的手段として用いることが推奨されている.先進国のみならず,世界のどこでも適用できる基準を意識したものである.
6)いつ評価するか
3)とも関連するが,栄養評価は1回行えば良いと言うものではない.常に栄養状態の悪化や栄養療法(治療)の効果も判定しながら繰り返し評価していく(図2).昨今の進行がんの外科治療は集学的治療が主流となっており,外科治療,薬物療法,放射線治療などとの組み合わせが必須となってきている.そして,これら集学的治療に対応した長期にわたる栄養療法の重要性が増している.それぞれの治療局面で定期的に栄養評価を行っていくことが求められる.

図02表02

VIII.おわりに
GLIM基準の包括的概念を中心に概説した.本稿が外科領域におけるGLIM基準普及の一助となれば幸いである.

 
利益相反:なし

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文献
1) Cederholm T , Jensen GL , Correia M , et al.: GLIM criteria for the diagnosis of malnutrition - A consensus report from the global clinical nutrition community. J Cachexia Sarcopenia Muscle, 10: 207-217, 2019.
2) Cederholm T , Jensen GL , Correia M , et al.: The GLIM consensus approach to diagnosis of malnutrition: A 5-year update. Clin Nutr, 49: 11-20, 2025.
3) 福島 亮治 , 深柄 和彦 :WEBアンケート調査から見る本邦の術前栄養管理の実態.外科と代謝・栄,55:89-99,2021.
4) 小野寺 時夫 , 五関 謹秀 , 神前 五郎 :Stage Ⅳ・Ⅴ(Ⅴは大腸癌)消化器癌の非治癒切除・姑息手術に対するTPNの適応と限界.日外会誌,85(9):1001-1005,1984.
5) Bouillanne O , Morineau G , Dupont C , et al.: Geriatric Nutritional Risk Index: a new index for evaluating at-risk elderly medical patients. Am J Clin Nutr, 82: 777-783, 2005.
6) Heyland DK , Dhaliwal R , Jiang X , et al.: Identifying critically ill patients who benefit the most from nutrition therapy: the development and initial validation of a novel risk assessment tool. Crit Care, 15:R268, 2011.
7) Rittler P , Jacobs R , Demmelmair H , et al.: Dynamics of albumin synthesis after major rectal operation. Surgery, 141: 660-666, 2007.
8) 福島 亮治 :血中アルブミン濃度を栄養評価に使用するのは適切か,外科侵襲時のアルブミン合成は亢進しているのか減少しているのかに関する考察.体液代謝管理,33: 36-39,2017.
9) Cederholm T , Bosaeus I , Barazzoni R , et al.: Diagnostic criteria for malnutrition - An ESPEN Consensus Statement. Clin Nutr, 34: 335-340, 2015.
10) Evans DC , Corkins MR , Malone A , et al.: The Use of Visceral Proteins as Nutrition Markers: An ASPEN Position Paper. Nutr Clin Pract, 36: 22-28, 2021.
11) Fukushima R , Compher CW , Correia M , et al.: Recognizing malnutrition in adults with critical illness: Guidance statements from the Global Leadership Initiative on Malnutrition. Clin Nutr, 49: 202-208, 2025.
12) Barazzoni R , Jensen GL , Correia M , et al.: Guidance for assessment of the muscle mass phenotypic criterion for the Global Leadership Initiative on Malnutrition (GLIM) diagnosis of malnutrition. Clin Nutr, 41: 1425-1433, 2022.
13) Jensen GL , Cederholm T , Ballesteros-Pomar MD , et al.: Guidance for assessment of the inflammation etiologic criterion for the GLIM diagnosis of malnutrition: A modified Delphi approach. JPEN J Parenter Enteral Nutr, 48: 145-154, 2024.

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