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日外会誌. 126(6): 504-506, 2025

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誰もが輝ける外科の未来へ

積み重ねた日々が,明日への力になる─外科専攻医1年目の学びと成長─

本荘第一病院 外科

美谷 幸喜

内容要旨
外科専攻医としての初年度,手術スキルの向上と学術的な発信を目標に取り組んできた.96件の執刀と継続的な振り返りを通じて着実な成長を実感し,学会発表や論文掲載も経験した.今後も実践と学びを重ね,未来の外科医としてさらなる研鑽を積んでいきたい.

キーワード
外科専攻医, 手術経験, 学術活動

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I.はじめに
手術スキルの向上と学術的発信を目標に,外科専攻医として初年度の研修に臨んだ.技術や知識の未熟さに直面しながらも,一つ一つの学びを積み重ねることで,確かな成長を実感できた1年であった.手術経験と学術活動を振り返り,直面した課題や得られた学びを整理して共有したい.

II.手術経験
手術に参加する中で,局所解剖や手技の流れがうまく結びつかず,自らの勉強不足を痛感する場面が多くあった.その克服のために,Prep(準備),Do(実行),Review(評価)の3要素からなるPDRサイクル1)を取り入れ,手術スキルの向上に努めた.
【Prep(準備)】
学生実習中には,「手順書を見せてくれたら実施の機会を与えられる」との言葉をいただき,それ以降,採血や静脈路確保などの基本的な手技においても自ら手順書を作成するようになった.この経験を手術学習に応用し,初期研修から外科専攻医研修にかけては,手術に対する理解を深めるために,助手として関わった症例においても積極的に手術手順書を作成した.イラストレイテッド外科手術 第3版2),がん@魅せ技3),メディ助4)などを活用し,手術全体の流れに加えて,各手順や局所解剖,注意点についても具体的に学習した(図1).また,Dry Boxによるトレーニングも併用した.
【Do(実行)】
2024年4月1日から2025年3月31日までに執刀した手術は96件(うち腹腔鏡手術 42件)であった.内訳は,胃切除術4件,大腸切除術14件(7件),虫垂切除術7件(7件),胆嚢摘出術20件(13件),鼠径ヘルニア修復術18件(11件),乳房切除術8件,その他25件(4件)であり,幅広い症例を経験する機会を得た.
【Review(評価)】
手術後には手順書と実際の経験を照らし合わせて詳細な手術記録を作成し,一つ一つの手技を振り返った.不明点は教科書を参照したり,上級医に相談したりすることで理解を深め,経験を記録として蓄積した.
PDRサイクルを用いた具体例として,男性の片側外鼠径ヘルニアに対する腹腔鏡下ヘルニア修復術の手術時間推移を提示する.症例数と手術時間の回帰分析では,症例数の増加に伴って手術時間が有意に短縮していた(p=0.020,R2=0.871,図2).経験の蓄積により指導の介入が減り,手技ごとの動作時間が短縮したことが要因として考えられた.
学生実習や初期研修での経験,そしてPDRサイクルの活用を通じて,準備と振り返りを重視する姿勢が自然と身についていった.さらに,当院は私を除くと40代以降の経験豊富な上級医で構成されており,若手指導に熱心で,積極的に執刀の機会が与えられる環境である.このような恵まれた環境のもとで一つ一つの実践を丁寧に積み重ねることができ,確かな成長を実感できている.

図01図02

III.学術活動
2024年4月から2025年3月までの約1年間で5回の学会発表を行い,1編が日本臨床外科学会雑誌に掲載された.初めての論文作成においては,先行論文の収集方法,論の構成,語句の使い方,投稿先の選定など多くの困難に直面した.
医中誌Web5),PubMed6),Connected Papers7)などのツールを活用しながらも,新奇性に乏しく不採用となった経験もあった.考察の論点整理に苦慮した際には,「考察の書き方は,まず先行研究の記述をよく読み,その構成や展開の方法を学ぶところから始めるとよい」と助言をいただいた.実際に同様の症例報告を参照しながら,論点の整理や文献との照合,議論の進め方に着目し,それらを意識して構成を考えるよう努めた.上級医に相談し助言を得たことで,初の論文掲載に至ることができた.

IV.おわりに
外科専攻医としての初年度研修を振り返り,手術スキル・学術的知識の未熟さを痛感する日々であったが,一つ一つの学びを積み重ねることで確かな成長を実感することができた.今後も上級医との良好なコミュニケーション,PDRサイクルを用いた手術スキルの向上,学術的発信の継続を大切にして,目の前の課題を一歩ずつ乗り越えていきたい(図3).

図03

 
利益相反:なし

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文献
1) Hill L , Lineback K : Better Time Management Is Not the Answer. Harvard Business Review, 2011. [cited 3 Apr 2025] https://hbr.org/2011/03/better-time-management-is-not
2) 篠原 尚 , 水野 惠文 , 牧野 尚彦 :イラストレイテッド外科手術.第3版,医学書院,東京,2010.
3) がん@魅せ技ホームページ.2025年4月3日. https://misewaza.carenet.com
4) メディ助ホームページ.2025年4月3日. https://medisuke.jp
5) 医中誌Webホームページ.2025年4月3日. https://search.jamas.or.jp
6) PubMedホームページ.2025年4月3日. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
7) Connected Papersホームページ.2025年4月3日. https://www.connectedpapers.com

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