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日外会誌. 126(5): 480-484, 2025

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手術のtips and pitfalls

整容性を重視した低侵襲乳癌手術のtips and pitfalls

乳房部分切除術における整容性向上のための簡便な修復手技―Suture Scaffold Techniqueの実際と工夫―

社会医療法人博愛会相良病院 乳腺甲状腺外科

満枝 怜子 , 相良 安昭



キーワード
乳房部分切除術, Suture Scaffold Technique, オンコプラスティックサージャリー

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I.はじめに
乳房部分切除術は乳癌患者の乳房喪失に伴う心理的負担を軽減できる一方,術後の非対称性が高い場合には患者の心理社会的機能を損なう可能性が指摘されている1).2010年に米国のMDアンダーソンがんセンターのGainerらによって報告されたSuture Scaffold Technique(SST)は,乳房部分切除後の欠損部を補填する方法で,非常に簡便ながら患者満足度が高く,術後合併症の頻度を増加させない手技であることをわれわれは報告してきた2) 3).SSTの手順と適応,注意点について述べる.

II.SSTの手順
腫瘤よりマージンを保ち切除範囲を設定し,乳腺内に色素でマーキングをする.マーキングを1~2cm超える程度まで皮弁を追加作成し,乳腺組織を切除する.止血と洗浄を完了した後,4-0ナイロン糸で乳腺の欠損部に足場を作成する.欠損部の空間を保持するようにナイロン糸で支持構造を形成し,1.5~2cm間隔で欠損部全体に縫合糸が交差し覆われるまで続けていく.5cm四方の欠損部であれば計5本程度の糸がかかることが目安となる.その後は通常通り閉層し終了となる.

III.SSTの適応
乳房部分切除術が適応となる症例の多くにおいて,SSTの適応が可能である.異なる区域に病変が存在する同側多発症例や,変形が起こりやすいBD区域の病変も良い適応となる.ただし,広範囲の皮膚切除を伴う症例においては,閉層の際に欠損部が縮小するためSSTの利点は少なくなる.また,乳房全体の25%以上の切除範囲を要する場合には,他のオンコプラスティック手技を勧める.

IV.SSTの注意点
SSTでは,術後に欠損部に滲出液が貯留し,足場に沿って肉芽組織が形成され,組織のリモデリングにより形成された瘢痕組織が欠損部を充填していくことで皮膚の陥凹を防ぐことができる.このため支持構造は可能な限り皮膚に近い層に作成することで,陥凹の発生を抑制できる.下垂乳房において,縦糸のテンションを強くすると乳頭位置の偏位が起きやすくなるため,縦糸はある程度緩みがある方が望ましい.ドレーン留置は不要である.

V.まとめ
SSTは簡便でありながら安全性が高く患者満足度が高い手技であり,乳房部分切除術における欠損修復方法として有用である.今後もSSTの手技の最適化を図り,より多くの乳癌患者に対して良好な整容性を提供できるよう努めたい.

 
利益相反:なし

図1 図2 図3 図4 図5 図6 図7 図8

図01図02図03図04図05図06図07図08

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文献
1) Waljee JF , Hu ES , Ubel PA , et al.: Effect of esthetic outcome after breast-conserving surgery on psychosocial functioning and quality of life. J Clin Oncol, 26 (20): 3331-3337, 2008.
2) Gainer SM , Lee E , Lucci A : The suture scaffold technique for improved cosmesis in partial mastectomy defects. J Surg Oncol, 102 (2): 184-186, 2010.
3) Mitsueda R , Gen A , Fujiki Y , et al.: Satisfaction of patients who received breast-conserving surgery using the suture scaffold technique: A single-institution, cross-sectional study. Ann Surg Oncol, 29 (6): 3829–3835, 2022.

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