日外会誌. 126(5): 475-479, 2025
手術のtips and pitfalls
整容性を重視した低侵襲乳癌手術のtips and pitfalls
ラジオ波焼灼療法による低侵襲早期乳癌治療
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国立病院機構東京医療センター 乳腺外科 木下 貴之 |
キーワード
ラジオ波焼灼療法, 低侵襲治療, 保険収載, 適正使用指針, 早期乳癌
I.はじめに
究極の低侵襲治療であるラジオ波焼灼療法(radiofrequency ablation therapy;以下,RFA)は,先進医療BにてPhaseⅢ試験を開始し,この短期結果で2023年に薬事承認と保険収載を達成した.
II.日本乳癌学会の適正使用指針
日本乳癌学会は,保険収載に際して患者選択基準(図1),施設要件(図2),術者要件(図3),治療プロトコール(図4)と実施手順を作成し会員および市民へ公開した.




III.標準的なRFA実施手順
早期乳癌のRFAを「体表面から乳房内病変に対して画像ガイド下にラジオ波電極針を穿刺し,病変にラジオ波による焼灼を行う手技」と定義する.医療技術の概要は図5に示す.
実際の手順を示す.
1)麻酔:全身麻酔にて,手術室で行うこととする.
2)使用器材:COVIDIEN社Cool-tipTM RFAシステム Eシリーズ.
3)穿刺方法:可及的に腫瘍の最大割面に対し平行となるよう,また腫瘍の中心を通るように穿刺する(図6).穿刺部位(皮膚)の熱傷を避けるよう工夫する.
4)出力方法:5Wから出力を開始し,1分経過時に10Wに設定,それ以降は1分毎に5または10Wずつ出力を上げていく.
5)焼灼範囲:腫瘍縁から1cmのマージンを目標とし,ニードルポジションを設定する.焼灼中の超音波画像にて腫瘍の不明瞭化とマイクロバブルの範囲を確認し,十分な焼灼エリアを確保する(図7).
6)熱傷予防:皮膚熱傷,胸壁熱傷を予防するために,皮下組織内に適宜5%ブドウ糖液の注入を行う.また,通電中は氷嚢にて皮膚冷却を行い,必要に応じて術後も一晩冷却を継続する.
7)焼灼判定:焼灼度合いが増してくると,電気抵抗値が上昇してくる.一定値以上,抵抗値が上昇するとシステムは出力を中断する.この現象をロールオフ(もしくはブレイク)と称する.1回目のロールオフ後にポンプを停止し,ニードルの焼灼温度を測定する.焼灼温度が70度以下の場合は,焼灼不良とし同じ場所にて焼灼を追加する.複数回の追加焼灼をもってしても70度に達しない場合は,焼灼終了時の画像所見を参考に治療を中止するか否かを判断する.



IV.特徴的合併症
焼灼時に皮膚および胸筋への熱傷予防が不十分だと術後整容性への悪影響が懸念される(図8).
臨床試験で報告された有害反応は
・術中有害反応は、熱傷7件(1.9%).
・術後創部の感染・壊死などの有害反応は9件(2.4%).
であった.

V.まとめ
日本乳癌学会が定めた適正使用指針を遵守して乳癌RFAを実施することが最も重要なポイントである.
利益相反:なし
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