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日外会誌. 126(5): 410-412, 2025

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誰もが輝ける外科の未来へ

医学部1年生を対象にした物理学×乳腺外科の合同講義の試み

札幌医科大学 外科学講座乳腺・内分泌外科学分野

島 宏彰

内容要旨
昨今の乳腺外科医の減少はさらに深刻となった.医学生のなかには乳腺外科を知らないものも存在する.そのような層を対象に啓発を進めるべく札幌医科大学にて医学部1年生を対象に物理学と乳腺外科合同で講義を試験的に行った.前半を物理学,後半を乳腺外科が担当し音波と超音波検査を題材に基礎医学と臨床医学を一つの授業に取り入れるという試みである.アンケートでは,超音波検査と乳腺外科そのものについて,あるいは,合同授業について反響があった.医学生に対する啓発事業の一つとして紹介する.

キーワード
地方大学, 人材育成, 医学生, 啓発

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I.はじめに
現在の外科医不足は深刻化しているのはよく知られるところであり,乳腺外科も同様の状況である.令和4年,本邦において若手外科医の確保が重要な課題となっていることについて日本外科学会からステートメントがあった1).地方の医大においても医学生の外科離れは,まったく無視できない状況である.原因は多数言われているが,乳腺外科についてはその認知度が低い点が挙げられる.
そのなかで当大学の医療人育成センターのセンター長,物理学教室教授の鷲見紋子先生のご厚意・ご支援のもと,試験的に基礎医学の物理学と臨床医学の乳腺外科の合同講義を行う機会を得た.乳腺外科として札幌医科大学附属病院に勤務する立場から,このプロジェクトを通じて得られたことと今後の展望について紹介する.

II.物理学×乳腺外科の授業構成
医学部1年生に対する基礎医学の授業について,これまで物理学は90分の座学としてシラバスを組んでいた.物理学の複数ある講義のうち,一つを試験的に物理学と乳腺外科の合同講義とする形で進めることになった.この合同講義では,前半物理学を60分行ったあとに臨床医学の乳腺外科について30分講義を担当した.講義の内容は物理学で音波についての基礎的な内容を講義した後に,その基礎知識がどのように臨床医学の場において実践されているかというところにフォーカスした.乳腺外科では超音波検査が日常診療で用いられているが,具体的に超音波検査がどのように用いられ,物理学がどのように役立っているかについて触れ,基礎医学と臨床医学のつながりについて理解できる授業内容をめざした.

III.アンケート結果から
アンケートは自由記載として収集したところ回答率95/118人(80.5%)であった.テキストマイニングAI2)を用い,頻度の高いキーワードを拾いあげたところ,トップ10に「乳がん」「乳腺」「超音波検査」「超音波」「走査」「基礎医学」「早期発見」「学ぶ」「用いる」「興味深い」が挙がった.この中から「超音波」「乳腺」に関するキーワードを挙げた学生の人数を集計し,さらに授業形態に関するコメントと超音波・乳腺そのものに関するコメントをした学生数をそれぞれ集計した.また,「物理」に関するコメントをした学生数も集積した.また別に,これらのキーワードの意味づけとして「良い」,あるいは,「それ以外」とした学生数を集計した(表1).この結果は基礎医学と臨床医学のコンビネーションを取り入れた授業形態について,あるいは,超音波検査・乳腺そのものに関心,さらには反響があることが示唆されていたと考える.また,乳腺外科の認識についてコメントした人数を見ると,今回の講義ではじめて乳腺外科を知ったという学生が一部に存在していることがわかる.乳腺外科の診療あるいは検診について,これまで知らなかった医学生はとくに男性にめだった.

表01

IV.誰もが輝ける外科の未来に向けて
大学の教員の立場からできることとして教育や啓発があるのだとしたら,実働部隊の獲得に直接結びつかないかもしれないが,数年先の将来に外科を考えてもらえるような機会をつくることに取り組むことも一つなのかもしれない.乳腺外科を知ってもらい,病院を回るクリクラの時期に外科選択の機会が増えるよう,良く知ってもらうことが改めて大切と考える.見方にもよるが,基礎医学の講義に臨床医学の奥行を付与する企画となりうる点は魅力的であると考える.この合同講義の内容を充実すべく,来年度のシラバスに具体的な内容を組み込む予定である.

V.おわりに
物理学×乳腺外科の合同講義の取り組みについて紹介した.一乳腺外科教員として,愚直に外科医の魅力を伝えていくことで,少しでも多くの医学生が外科,乳腺外科に興味を持つようになり,将来外科医として活躍するような将来がくることを期待して進めていきたい.
謝 辞
今回の物理学×乳腺外科の合同講義プロジェクトにご厚意・ご支援いただいた医療人育成センター長,物理学教室教授鷲見紋子先生に深く感謝申し上げます.

 
利益相反:なし

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文献
1) 日本外科学会からのメッセージ.2025年1月6日. https://jp.jssoc.or.jp/modules/aboutus/index.php?content_id=68
2) User Local 大容量テキストマイニング.2024年12月28日. https://wordcloud.userlocal.jp

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