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日外会誌. 126(4): 390-395, 2025

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手術のtips and pitfalls

減量・代謝改善手術のtips and pitfalls

腹腔鏡下スリーブバイパス術のコツとピットフォール

東京慈恵会医科大学 上部消化管外科

大城 崇司 , 矢野 文章



キーワード
高度肥満, 腹腔鏡下手術, 減量・代謝改善手術, スリーブバイパス, スリーブプラス

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I.はじめに
2024年6月より,腹腔鏡下スリーブ状胃切除術(バイパス術を併施するもの)(以下,スリーブバイパス)が保険収載されている.腹腔鏡下スリーブ状胃切除術(以下,LSG)に比べ減量効果や糖尿病寛解率が高いとされるが,LSGに加え,十二指腸切離と十二指腸・空腸吻合,腸間膜間隙・Petersen’s spaceの閉鎖を伴うため手技が複雑で難易度が高い.ルーワイ法によるスリーブバイパスがオリジナルではあるが,十二指腸・空腸単吻合によるループスリーブバイパスも行われている.本稿では,われわれが行ってきたルーワイスリーブバイパスのコツとピットフォールを中心に,今後本邦でも採用される可能性のあるループスリーブバイパス,スリーブプラスについても概説する.

II.ルーワイスリーブバイパスについて
先進医療による手術適応は,①Body mass Index (BMI)35以上の高度肥満に,②Leeらが報告したABCDスコア1)が5点以下もしくはインスリンユーザーの2型糖尿病患者に限定されていたが,保険診療においては,高度肥満で2型糖尿病があれば算定できることになり,その適応は拡大されたと解釈できる.わが国においても実績があり,長期成績も良好であるが2),その普及が進んでいるとは言えない.後述するその他のスリーブバイパス術の長所と短所を理解した上で,各施設の方針下に今後選択される術式になっていくと思われる.

III.ループスリーブバイパスについて
本邦の保険診療では,自動縫合器加算上限個数が6個であることから,十二指腸・回腸単吻合によるバイパス術を模倣し,共通脚を長く確保したループスリーブバイパスが行われることも多い.しかし,縫合不全を起こした場合に,胆汁性腹膜炎に容易に発展することには注意を払う必要がある.また,胆汁の逆流予防のために空腸輸入脚を10cm程度,胃大弯側へ固定すると同時に,十二指腸・空腸吻合部の小弯側も空腸輸出脚と固定しておくことが吻合部の捻じれ予防になると考えている(図7).

図07

IV.スリーブプラスについて
LSGの欠点を補い,減量・代謝改善効果を強化すべく,LSGに上部空腸をバイパスする要素を追加する「スリーブプラス」というコンセプトで複数の術式が提案されている3).保険診療のスリーブバイパスでは,具体的な術式が規定されていないため,今後,前述のスリーブバイパス以外に,Sleeve gastrectomy with transit bipartition,Single-anastomosis sleeve jejunal bypass,Sleeve gastrectomy plus proximal jejunal bypass(図8)といった術式が本邦でも採用される可能性がある.この3術式の共通の利点は,十二指腸球部の切離や吻合の必要がないことである.わが国におけるスリーブプラスのデータ集積はこれからではあるが,臨床現場でも今後対応を要する術式になると思われるのでトピックとして取り上げた.

図08

V.まとめ
今回,本邦の消化器外科医にとっても慣れ親しまれた器械吻合法を紹介したが,十二指腸球部断端の距離が十分に確保できない場合には,笠間らの原法に沿った手縫い2層縫合を行う方が安全であると考えられる.基本的な手術手技の習得に加え,高度肥満症患者の特殊な体型に慣れ,周術期のトラブルシューティングにも精通した上で,スリーブバイパス術には取り組むべきであることを強調しておく.

 
利益相反:なし

図1 図2 図3 図4 図5 図6

図01図02図03図04図05図06

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文献
1) Lee WJ , Almulaifi A , Tsou JJ , et al. : Laparoscopic sleeve gastrectomy for type 2 diabetes mellitus: predicting the success by ABCD score. Surg Obes Relat Dis, 11: 991-996, 2015.
2) Seki Y , Kazunori K , Haruta H , et al. : Five-Year-Results of Laparoscopic Sleeve Gastrectomy with Duodenojejunal Bypass for Weight Loss and Type 2 Diabetes Mellitus. Obes Surg, 27: 795-801, 2017.
3) Huang CK , Katakwar A . Sleeve plus procedures: need of time. Surg Today, 50: 419-422, 2020.

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