日外会誌. 126(4): 323-324, 2025
誰もが輝ける外科の未来へ
女性外科医のキャリア継続―Z世代への期待―
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千葉大学大学院医学研究院 呼吸器病態外科学 松井 由紀子 , 佐田 諭己 , 豊田 行英 , 稲毛 輝長 , 田中 教久 , 田村 創 , 千代 雅子 , 鈴木 秀海 |
キーワード
女性外科医, キャリア形成, Z世代, 働き方改革
I.はじめに
本邦の女性医師の割合は年々増加傾向にある. 2022年12月31日時点での本邦の医師数は343,275人,そのうち女性医師は81,139人(23.6%)を占める1).一方,日本外科学会における女性会員数は2021年12月時点で4,159人(会員数の10.3%)に過ぎず2),依然として少数派である.
外科医は判断力・行動力・統率力が必要とされる一方で,緻密さ・丁寧さ・コミュニケーション力も求められる.特に後者は多くの女性が得意とする分野であり,業務の円滑な遂行に寄与する.しかし,多くの制約から専門を専攻する過程で外科を敬遠する女性医師は少なくない.
II.制約1:過重労働
外科を専攻する上での大きな障壁の一つが長時間労働である.外科医は他専門科と比較して長時間労働や緊急の呼び出しが多い.女性医師といっても人それぞれ価値観や働くスタイルは多様だが,妊娠・出産・育児は転職・仕事の制限・キャリア中断のきっかけとなる場合がある.近年,出産・育児支援制度の整備が進んでいるものの,育児に伴う長期的な時間的制約は依然として存在し,不規則かつ長時間の労働を要する外科は選択しづらいと考えられる.
III.制約2:ステレオタイプ
家事・育児は女性の仕事,というステレオタイプな考え方により,女性は男性より家庭の仕事量が多い.これは外科医も同様である.日本呼吸器外科学会のアンケートの結果では,未就学児のケアは誰がするか,という問いに対し,女性医師は保育園がほとんどと回答したのに対し,男性医師の回答ではパートナーが多かった3).この結果は,日本社会における「育児は女性の責任」という考え方が依然として存在することを示唆している.
IV.Z世代への期待
しかし,近年,男性も育児に積極的に関与する意識が高まりつつある. この変化には,いわゆるZ世代の価値観が影響している.Z世代とは,一般的に1990年代後半から2010年代初頭に生まれた世代を指す.紙媒体が主だったX世代やY(ミレニアル)世代と異なり,デジタルネイティブの世代である.この世代は,多様性重視,社会問題への関心,ワークライフバランス重視,柔軟な働き方,自己表現,情報過多,価値観の多様性に特徴があり,SNSを通じて他者とのつながりを求め,共感や承認欲求が強い.出産・育児中の医師の働き方を多様な働き方の一種として捉え,デジタルネットワークを駆使した共同的対応ができる可能性を有している.このような世代の台頭により,外科診療においても,出産・育児中の医師に対する固定観念の払拭と,男女問わず多様な働き方への適応が期待される.
V.働き方改革について
2024年から本格始動した医師の働き方改革は,業務効率化,タスクシフト,報酬制度の見直し,研修制度の充実などが必要とされ,課題も多い.
しかし,これらの施策は,育児と仕事の両立を望む医師にとっては,従来の働き方を見直す契機ともなり得る.特に,グループ制やフレックス制の導入,業務の分担強化は,育児中の医師にとって有益である.勤務時間の調整や,通常時からの密なコミュニケーションの確保など,職場環境の改善は,外科医のキャリア継続を支援する重要な要素となる.
VI.おわりに
外科医が減少している中,女性外科医に期待されることは多いが,キャリア継続に関しては課題も多い.しかし,世代の変遷を追い風とし,柔軟で多様な働き方を取り入れることで,その課題の解決につながることが期待され,ひいては外科診療の持続的な発展に寄与できると考えられる.
利益相反:なし
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