日外会誌. 126(3): 303-307, 2025
手術のtips and pitfalls
先天性横隔膜ヘルニアに対する胸腔鏡手術のtips and pitfalls
先天性横隔膜ヘルニアに対する胸腔鏡手術:パッチ閉鎖を行う場合の手術手技
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大阪大学大学院 小児成育外科 奥山 宏臣 |
キーワード
Thoracoscopic repair, congenital diaphragmatic hernia, surgical technique, patch closure
I.はじめに
近年,先天性横隔膜ヘルニアに対する胸腔鏡手術は,術式の工夫により開腹術に遜色ない再発率が報告され1),パッチ閉鎖を要する重症例にも適応が広がりつつある.胸腔鏡手術は,整容性だけでなく,拡大視野下の確実な縫合操作といった優位性も期待できる.
II.適応
体重2kg以上で,側臥位で4~5mmHgの人工気胸に耐えられる症例.欠損孔の大きさでは特に適応を設けていない.
III.手術体位&ポート挿入
術者は患児の頭側,モニターは足側,麻酔医は患側と反対側(図1左).第4-5肋間腋窩に3 mmカメラポートを挿入し,人工気胸(流量0.5~1.0 l/分,圧4~5 mmHg)を確立後,同レベルの前腋窩線に5 mm,後腋窩線に3 mm ワーキングポートを挿入(図1右).頭高位として脱出臓器を腹腔内に還納後,欠損孔の全周を確認する(図2左). 必要に応じて3mmポートを追加する.


IV.Tips
2)
ポイントは以下2点.(1)パッチを積極的に使用してドーム状に横隔膜を再建する.(2)ラパヘルクロージャー®(以下,LC)を用いてパッチを胸壁へ直接縫合する.
まず横隔膜後縁を電気メスで剥離する.欠損孔後縁は後腹膜と連続しているので,結腸や腎臓を損傷しないように注意する(図2右).次に横隔膜内側縁を数針直接縫合する(図3).この縫合は緊張がかからない範囲にとどめ,外側の修復にはパッチを積極的に使用する.パッチは1mm厚のGORE-TEX®を使用し,欠損孔より縦横とも2cm程大きな径となるようにトリミングして,5mmポートより胸腔内に挿入する.縫合糸は2-0非吸収糸.最内側縁は横隔膜―パッチ―横隔膜の3点縫合とし(図4),これに連続して横隔膜後縁とパッチを縫合する(図5).横隔膜が全く形成されていない外側は,パッチを胸壁に直接縫合する.LCを胸壁外から刺入し,パッチを貫通したところで糸をリリースし(図6a),LC先端を皮下まで引き抜く.次に胸壁刺入点を少しずらして,パッチを再度貫通させ,先にリリースした糸をキャッチする(図6b).糸を胸壁外に引き抜き皮下で結紮する(図6c,図7).必要に応じて,肋間筋あるいは肋骨を巻き込むように縫合する.隣接する縫合糸の間隔はできるだけ短くしてgapless縫合とする.






V.Pitfalls
横隔膜後縁は脆弱で,過度な剥離操作により容易に裂けて再発の原因となる.後縁の剥離は縫代を確保する程度に留め,パッチを積極的に使用する.大きなパッチを用いることで緊張のないgapless縫合が可能となり,再発率の低下も期待できる(図8).

利益相反:なし
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