日外会誌. 126(2): 192-199, 2025
手術のtips and pitfalls
肝膵同時切除における膵再建の工夫
肝膵同時切除における膵胃吻合のtips and pitfalls
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横浜市立大学 消化器・腫瘍外科学 遠藤 格 |
キーワード
肝膵同時切除, 膵液瘻, 膵胃吻合
I.はじめに
Hepatopancreatoduodenectomy(HPD)は,肝切除と同時に膵頭十二指腸切除術を施行する侵襲度の高い外科手術である.この手技は,広範囲に広がる肝門部領域胆管癌や,肝および膵臓,胆管にまたがる胆嚢癌などの難治性疾患に対して適応されることが多く,術後合併症や死亡率も他の手術に比べて著しく高い1)
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3).本術式で適応となる上述のような疾患は多くの場合soft pancreasであることから,最も高頻度かつ重篤な合併症は膵液瘻である.それに続発して腹腔内膿瘍,仮性動脈瘤破裂,肝不全が発生し,最終的に手術死亡に至ることが頻度の高い不良な転帰である.われわれの施設では従来膵消化管再建方法として膵空腸吻合(PJ)を行っていたが,2012年からは膵液瘻発生軽減を狙って嵌入法による膵胃吻合(PG)を行ってきた.本稿では教室で行っているHPD症例におけるPGの手技を供覧したい.
II.手技の実際
当科で行っているHPD-PGのTipsは3点である.①膵切離後,直ちに膵胃吻合を行う.これは可及的に膵液で手術野の脂肪組織の鹸化を防止することを目的としている.②吻合時には胃を引っ張り上げ,吻合終了後に膵胃吻合部が正中よりも左側に落ち込むようにする.膵液瘻が生じた際に膵液が正中よりも右側に存在する門脈や肝動脈の周囲に貯留しないことを狙っている.③胃の切開はなるべく小さくする.ついつい胃の切開は大きくなりがちだが,胃は筋肉の塊のような臓器なので,小さい切開にして膵断端を胃内に嵌入させる.吻合後に胃液や膵液が術野に漏れないことを狙っている.
III.おわりに
当科で行っているHPD-PGの手技の実際を供覧した.その成績はHPD-PG 34例中膵液瘻が発生したのは4例(ISGPF GradeB)であり,手術死亡は膵液瘻に関係のない合併症による1例であった.まだまだ改善の余地があると考えているが,以前よりは格段に安全性が向上したという実感を持っている.本稿をお読みいただいた皆様に少しでも参考にしていただければ望外の喜びである.
利益相反:
講演料など:インサイト・バイオサイエンシズ・ジャパン合同会社,旭化成ファーマ株式会社,アストラゼネカ株式会社,MSD株式会社奨学(奨励)寄附金:旭化成ファーマ株式会社,中外製薬株式会社








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