日外会誌. 126(1): 104-106, 2025
定期学術集会特別企画記録
第124回日本外科学会定期学術集会特別企画(4)「外科診療における医師働き方改革―これまでの対策と今後の課題―」
6.当院における働き方改革に向けた取組みの成果と課題―この1年で大きく変われたのか?―
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1) 地方独立行政法人市立東大阪医療センター 外科 山田 晃正1)2) , 谷 直樹1) , 北尻 成司1) , 矢田 大智1) , 石田 智2) , 津田 雄二郎2) , 杢谷 友香子2) , 中島 慎介2) , 谷田 司2) , 松山 仁2) , 中田 健2) (2024年4月19日受付) |
キーワード
働き方改革, 時間外労働, タスクシフト, インセンティブ, 意識改革
I.はじめに
2024年4月から時間外労働の上限規制が法的拘束力を持つようになり,外科医の働き方に変容が求められている.
当院は2次医療圏の中核病院(520床)で,夜間/休日を含む365日の外科(おもに消化器)の緊急手術に計11名(常勤医:8,外科専攻医:3)で対応している.2023年度実績は全940件の手術を実施し,うち174件(18.5%)が緊急手術であった.
当院では上限960時間のA水準を堅守すべく,かねてよりいくつかの取組みを実践し,その有用性についての調査結果を本学会(2023年)でも報告してきた1).
II.目的
当院での取組みに対する現場の声を調査するとともに,前回報告以降1年が経過した時点での成果や課題を再調査することを目的とした.
III.方法と対象
当院で六つの取組みとその有用性について外科医にアンケートを実施した.アンケートの対象は外科常勤医と外科専攻医を合わせた11名(男:女=10:1)で,平均年齢は39.8歳(26~58)である.アンケートの評価には「非常に良い」「良い」「どちらでもない」「あまり良くない」「非常に良くない」といった5段階尺度法を採用し,「非常に良い」をスコア5点,「非常に良くない」をスコア1点として点数化するとともに,無記名自由記載で現場の意見を収集した.
さらに,医師のタスクシフト先として9職種から重要と思われる順に9点→1点をつける方式のアンケートを行い,重要なタスクシフト先を洗い出した.
IV.取組み
(1)業務のスリム化に向けた取組みとして,①複数主治医(グループ)制の導入,②休日の病棟当番制の導入,③“LINE WORKS”を用いた情報共有を行った.
(2)法令遵守に向けた取組みとして,④日直/当直の事前希望調査(いわゆる28時間ルールの遵守),⑤手術予定と当直/オンコールの突合(診療報酬上の時間外加算算定を企図)を行った.
(3)働き方改革への動機付けに向けた取組として,⑥外科医へのインセンティブの確保(緊急手術に関しては診療報酬の20%を従事人員で按分)を行った.
V.結果
アンケートスコア上(今回/前回)最も有効性があると回答を得たのは,「④当直の事前希望調査」(4.7→4.5)であった.一方,「①複数主治医制」は良い取組みとの評価(4.5→4.4)であったが,有効性については最低評価となった(3.8→3.6).「③アプリの利用」も良い取組みと評価(4.3→4.1)されているにも関わらず,有効性に関しては低評価(3.8→3.9)であった.最も評価を落とした取組みは「②病棟当番制」の有効性で4.3から3.9へ0.4ポイント低下した.「⑥インセンティブ」に関しては3.3→3.0と更に低下し,現行のインセンティブの額では満足度が低いことが浮き彫りになった(図1).
図1のレーダーチャートに示したように,昨年に比し,全体的に「有効性」の評価が低下する傾向にあり,各種取組みによる効果は停滞し,現行のままでは,限界に近づくのではないかと危惧される.
医師のタスクシフティング先に関する重要度調査の結果として,2022年度は看護師(8.1pts)が最も期待されていたが,今回2023年度の調査では,看護師(7.1pts)を医師事務作業補助者と薬剤師(いずれも7.5pts)が上回り,最も重要視される結果となった(表1).


VI.取組み開始後の動向と現場の声
複数主治医制については,「当直明けや出張時に有効」という肯定的意見もあるが,責任の所在を疑問視する否定的意見もある.加えて患者やコ・メディカル側の意識改革は全く進んでおらず,チーム医療に対する理解を得るための工夫が必要と思われた.
病棟当番制についても,概ね肯定的には捉えられており,徐々に浸透し,土日祝の出勤人数は減少した.しかし,術後管理も専攻医にとっては修練の一部でもあり,自己研鑽として登庁する場面もまだまだ散見される.こういった行動は,日本人固有の価値観のもたらす影響が多々ある2)のではと類推される.
アプリの利用は,特に専攻医など若手医師が非常に積極的であり,今後普及していくことが予想される.
インセンティブの確保は,ある程度モチベーションの維持には有用と思われるが,インセンティブ以外にも,「医師としての使命をいかに果たすか?」といった大きな問題があり,働き方改革への動機付けにそれほど大きくは影響しないと思われた.
タスクシフト先としては,看護師のみならず,薬剤師や医師事務作業補助者の存在価値が重要視されてきており,看護師に関しては,より医学的で高度なタスクシフトとして特定行為看護師やNP(Nurse Practitioner)の導入が必要になってくると考えられる.
VII.おわりに
総合的に当院の取組みは相対的に進んではいると評価されているものの,1年前よりは若干その評価が停滞しており,次の施策として,医師側のみならず,患者やコ・メディカル側の意識改革を促すための取組みに着手することが急務であると思われた.
利益相反:なし
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