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日外会誌. 126(1): 98-100, 2025

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定期学術集会特別企画記録

第124回日本外科学会定期学術集会特別企画(4)「外科診療における医師働き方改革-これまでの対策と今後の課題-」

4.消化器外科領域における診療看護師(NP)としての活動実績と今後の課題

1) 藤田医科大学病院  FNP室総合消化器外科
2) 藤田医科大学 総合消化器外科
3) 藤田医科大学 先端ロボット・内視鏡手術学講座
4) 藤田医科大学 先端外科治療開発共同研究講座
5) 藤田医科大学 高度情報医療外科学共同研究講座

竹松 百合子1) , 柴崎 晋2) , 廣 純一郎2) , 大塚 幸喜2) , 高原 武志2) , 宇山 一朗3)4) , 須田 康一2)5) , 稲葉 一樹1)3)

(2024年4月19日受付)



キーワード
診療看護師(NP), タスク・シフト, 特定行為研修, 働き方改革

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I.はじめに
外科医の減少や長時間労働などが問題視される中,2024年4月から働き方改革が本格化し,タスク・シフトの推進が重要視されている.その一つとして,NP(nurse practitioner)制度を含めた「特定行為研修修了看護師」へのニーズが高まっている.当院におけるNP制度とその活動実績について報告する.

II.特定行為研修修了看護師と診療看護師
特定行為研修とは,看護師が手順書により特定行為を行う場合とくに必要とされる実践的な理解力,思考力および判断力ならびに高度かつ専門的な知識および技能の向上を図るための研修であり,特定行為区分ごとに厚生労働省が指定する特定行為研修の基準に適合するものと定義されている1) 2).「診療看護師」(いわゆるNP)は,日本NP教育大学院協議会による呼称であり,NPも特定行為研修修了看護師に含まれている.NPは,大学院修士課程を修了し,日本NP教育大学院協議会が実施するNP資格認定試験に合格したものであり,5年毎の更新制度を設けている.

III.FNPによる診療活動内容
当院では,2012年より独自の急性期・周術期分野の診療看護師育成制度を開始した.大学院修士課程にて特定行為21区分38行為の研修を終了し,一般社団法人日本NP教育大学院協議会が実施するNP資格認定試験に合格したものをFNP(Fujita Nurse Practitioner)と認定した1).FNPに認定後2年間各診療科のローテーション研修を行った後に3年目以降で診療科に固定配属され,現在37名が勤務している.FNPは,医師の不在下でも実施可能な特定行為や,医師の直接指示下で実施可能な相対的医行為を行い,医師の日々の診療をサポートしている.2018年度より消化器外科にもFNPが固定配置され,様々な周術期管理をチームの一員として行っている.消化器外科FNPの主な活動内容を紹介する.
1)手術行為の支援
手術助手として実際に手術に参加し,腹腔鏡手術のスコピスト,ロボット支援手術の助手や閉創などを実施している.これらは特定行為ではなく,相対的医行為にあたる.第二助手を中心に参加しているが,ヘルニアや虫垂炎などの2人で実施する手術の場合は第一助手として参加することもある.体位作成や術野の消毒,ドレーピング,モニターなどのセッティングや麻酔科の手伝いなども必要に応じて実施している.FNPが術野に参加することで医師が患者の対応や救急当番など手術以外の診療業務に従事できる.
2)周術期管理(特定行為の実施などを含む周術期管理の提案)
外科医とともにICU・HCUや一般病棟で周術期患者の全身状態の評価や術後管理を実施している.特定行為については38項目中の18項目を実施し,FNPが独立して,ドレーン抜去を含むドレーン管理,創部管理,末梢型中心静脈カテーテル(PICC)挿入や,電解質の補正を含めた栄養管理などを行っている.また,相対的医行為として,医師の直接指示下に抜糸・抜鈎や生体肝移植患者の腹部超音波による肝血流評価なども実施している.さらに,検査・注射・処方などの代行入力も合わせて実施している.
3)その他
術前手術リスク評価として,患者の全身状態をアセスメントする.追加検査や他科依頼の必要性を判断し,検査結果や術前中止薬を確認する.術前カンファレンスにも参加している.術前から医師と患者情報を共有することで,患者背景や予定術式の理解を深めた上で手術に関わることができる.術後は,病棟カンファレンスや他職種カンファレンスに参加し,医師と術後経過や治療方針を共有する.医師と共有した情報を看護師,薬剤師,セラピスト,栄養士などとも共有し,診療チーム内,診療チーム間のコミュニケーションが円滑に進むよう調整する.

IV.結果
2018年度~2022年度の5年間におけるFNP1名分の活動実績を示す.
1)手術支援
FNPの手術参加時間は,総参加時間が4,557時間,年平均911時間であった.手術参加件数は,総参加件数1,055件,年平均211件であった.開腹手術,ロボット支援手術,腹腔鏡手術の内訳と年次推移を表1に示す.開腹手術は大きく変化はなかったが,年々腹腔鏡手術が減少しロボット支援手術の助手が増加した.日本内視鏡外科学会技術認定取得を目指す外科医が執刀する症例のカメラも数多く経験した.
2)特定行為件数
特定行為件数は11,718件で,年平均2,343件であった.特に多いものはPICC挿入1,700件,電解質補正1,691件,ドレーン(腹腔内,胸腔内)抜去1,672件,抗菌薬投与1,047件であった.
3)PICC挿入
当科で挿入された中心静脈カテーテルは2,451件で,そのうちPICCが2,151件(88%)を占めており,FNPの挿入件数は1,881/2,151件(87%)であった.ここ数年では,PICC挿入割合がCVC全体の98%になっており,NPによるPICC挿入が97%となっている.PICCはほぼ透視室で挿入しており,成功率は1,867/1,881(99%)だった.挿入時合併症は,1件(奇静脈への迷入)のみであった.
4)代行入力
FNPの代行入力件数は,総件数が39,449件で,年平均7,899件だった.医師とFNPの入力割合においてNPの入力割合が多かったものは,処方,培養検査や輸血など緊急時に至急入力が必要とされる項目であった.
5)在院日数比較(FNP介入チームとFNP非介入チーム)
2018年度~2021年度におけるFNP介入群とFNP非介入群の在院日数の比較では,2021年度を除きFNP介入群で平均在院日数は短い傾向であったが有意差は認めなかった.

表01

V.考察
本研究では,FNPが,特定行為にとどまらず多くの行為で医師のタスク・シフティングに大きく貢献している可能性が示唆された.FNPが医師と共にあるいは代行して手術や病棟管理に関わることで,医師の負担軽減につながる.さらに,医師と情報共有したNPが現場にいることで多職種間の情報共有が円滑に進み,職種間のみでなくチーム間の橋渡しや,患者満足度の向上,医療安全の向上にも貢献できる.一方で,解決すべき課題として,固定FNPの人数が少ないこと,FNPのキャリアパスが確立されていないことが挙げられる.現状,当科では固定FNPが1名であり,FNPへ業務が集中し,身体的・精神的負担や勤務時間が多くなりすぎる傾向にある.また,超過勤務に対する手当や,昇給・昇進等に関する規定も十分整備されているとは言い難い.病院側が定期的な面談を通してFNPの職務実態を十分に把握し,FNPの超過勤務の軽減,給与面でのサポート,リクルートと育成強化,職位整備などを早急に行う必要がある.さらに,特定行為研修修了看護師との効率的な役割分担,チーム形成を図ることも必要と考える.

VI.おわりに
FNPは医師の業務負担の軽減と職種間の円滑な連携,患者満足度の向上などに大きく貢献する可能性があるが,課題もまだまだ多い.今後も継続的にNP制度の利点や課題を明らかにし,NP制度の認知度向上,全国的普及促進に尽力する所存である.

 
利益相反:なし

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文献
1) 柴崎 晋 , 竹松 百合子 , 髙原 武志 ,他:「特集」外科医の働き方改革を考える.テーマ2.働き方改革実現に向けた具体的な取り組み.6.特定行為研修終了看護師.1)医師の立場から.手術,78:58-64,2024.
2) 厚生労働省:特定行為研修とは.2023年10月8日. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077114.html

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