日外会誌. 126(1): 61-69, 2025
手術のtips and pitfalls
動脈スイッチ手術のtips and pitfalls
典型的な冠動脈パターンに対する動脈スイッチ手術「Bay-window法」
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奈良県立医科大学先天性心疾患センター 山岸 正明 |
キーワード
完全大血管転位, Shaher 1型, 動脈スイッチ手術, Bay-window法, Longitudinal extension法
I.はじめに
完全大血管転位症(TGA)および大血管転位型両大血管右室起始症(TGA型DORV)では,約60%の症例でShaher 1型(Leiden分類 [1LCx: 2R],Yacoub分類 A型)の冠動脈形態を示す.典型的なShaher 1型冠動脈を呈するTGA,TGA型DORV例に対するbay-window法1)
2)による動脈スイッチ手術(ASO)を解説する.
II.手術手順
1.冠動脈移植部位の決定(図1)
体外循環開始前に大動脈と肺動脈間を剥離する.この際,肺動脈前面の余分な外膜も剥離しておいた方が良い.まず,左冠動脈起始部を確認して,それに対応する肺動脈壁の移植部位(冠動脈開口部中心点が対応する位置)をマーキングする.
2.大動脈切断(図2)
ST junction の頭側で大動脈を切断する.
3.肺動脈切断(図3)
冠動脈移植部位よりも頭側かつ肺動脈分岐部手前で肺動脈前面を横切開する.脆弱な肺動脈壁を新大動脈側に多く残すことを避けるため,必要以上に切開線を頭側にする必要はない.
4.冠動脈剥離,冠動脈カフ採取(図4)
左右冠動脈カフをそれぞれU字状に切除する.冠動脈の起始部を剥離する.
5.主肺動脈J字切開(図5)
マーキングした冠動脈移植中心点を目安として肺動脈壁をJ字切開する.
6.冠動脈カフ吻合(Bay-window法)(図6)
左右の冠動脈カフを肺動脈壁切開部位に吻合する.
7.大動脈再建(図7)
Lecompte法に準じて,肺動脈を上行大動脈の前方に転位させる.新大動脈近位端と上行大動脈を口径差を調整しながら端々吻合する.
8.肺動脈再建(図8)
肺動脈分岐部の背側を縦切開.冠動脈欠損部を補填した自己心膜パッチの頭側部分をV字状に残しておき,肺動脈分岐部切開部に縫合する(longitudinal extension法2)
3)).








III.まとめ
ASOでは冠動脈移植の成否が手術成績に大きく影響する.移植した冠動脈が屈曲,過伸展しないような移植方法を選択する必要がある.Bay-window法は移植した冠動脈カフの転位角度を最小限にするとともに,起始部に余裕を持たせて過伸展を予防することができる有用な移植方法である.典型的なShaher 1型のみならず,複雑な冠動脈形態にも対応可能な術式である.
利益相反
原稿料など:株式会社メジカルビュー社
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