日外会誌. 126(1): 2-3, 2025
会員へのメッセージ
CST法人設立に向けて-CST推進委員会から-
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CST推進委員会委員長,京都大学医学研究科肝胆膵・移植外科 波多野 悦朗 |
現行法の下で,医学教育を目的とする解剖実習以外の研修などにご遺体を使用するための指針として,2012年に日本外科学会と日本解剖学会が共同で「臨床医学の教育及び研究における死体解剖のガイドライン」が公開された1).これにより,わが国でも違法性を問われることなく,ご遺体を用いた研究や医療技術の修練が可能となった.また,厚生労働省もご遺体を使用した手術手技向上のための研修(Cadaver Surgical Training;CST)を広く普及させ,医療技術や医療安全の向上を目的として「実践的な手術手技向上研修事業」の助成を開始した.この事業には,技術トレーニングの教育面だけでなく,新規手術手技や,それに伴う医療機器開発も含まれており,文部科学省や経済産業省などの関連事業も加わっている.CSTの実施に当たって,日本外科学会CST推進委員会は,ガイドラインの規定に沿って各大学が執行したCSTの実施報告書を受理し,実施内容の妥当性,予算運営の公正性,企業関連のCOI等に関する透明性を審査し,必要に応じて指導を行ってきた.
ガイドライン公表後の10年間の取りまとめでは,1,173件の教育のCST実施やご遺体を使用した研究開発の報告があった2).コロナ禍でCSTの実施件数が一時減少したものの,2022年度には報告件数は上昇に転じ,年間548件の報告があった.また,2012年から2021年の10年間の診療科別CSTの実施件数を集計すると,日本外科学会以外の領域のCST実施も数多く報告され,特に整形外科が最も多くなっている.
CSTの普及により,これまで日本外科学会が行ってきた各大学のCST報告の審査,ガイドライン改訂などのルール策定,並びに将来構想の策定等の業務は,日本医学会連合等の各領域と献体を扱う日本解剖学会を統括する組織が行う必要性が生じてきた.さらに歯科領域もそれに応じる必要がある.新たなCSTを統括する組織である“一般社団法人 日本CST推進協会(仮称)”の確立のための準備作業を日本外科学会CST推進委員会,並びに日本外科学会事務局と合同で行うこととし,2024年9月4日第1回のCST事業の法人設立準備委員会が開催された.11学会の代表および日本医学会連合,全国医学部長病院長会議,篤志解剖全国連合会,歯科大学学長・学部長会議からも参加をいただき,まずは定款案に関して議論が交わされた.目的および活動内容には一致をみたものの,名称や法人の構成員に関しては引き続き検討されることになった.引き続きCST事業の法人設立のため関係各所と調整を継続していく.
日本外科学会会員にCST推進委員会の活動報告を行うとともに,今後も会員のご支援,ご指導を賜りたくお願いする次第である.
利益相反:なし
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