日外会誌. 125(6): 545-547, 2024
手術のtips and pitfalls
ロボット支援大腸手術の最新手技
側方リンパ節領域の郭清
静岡県立静岡がんセンター 大腸外科 塩見 明生 |
キーワード
直腸癌, ロボット支援手術, 側方リンパ節郭清
I.はじめに
最近,術前化学放射線療法+Total mesorectal excisionが標準術式とされる欧米や東アジア各国においても,とくに転移陽性例に対する側方リンパ節郭清(lateral lymph node dissection: LLND)が注目を集めている1).
ロボット支援手術の骨盤深部での操作性の良さは,同術式に有用だと感じる.
本術式は,骨盤解剖に基づいた「四つの壁」をメルクマールとすることで,安全で不足なく行える.
II.「四つの壁」
LLNDは「四つの壁とその間に存在するリンパ節を郭清する手技」と考えると理解しやすい.内側から順に,壁A(下腹神経,骨盤神経叢),壁B(内腸骨血管臓側枝の内側),壁C(内腸骨血管臓側枝の外側),壁D(骨盤壁)である.A とB の間がNo. 273およびNo. 263,C とD の間がNo. 283に相当する.
III.手技の実際
a) Step1 壁Aの同定
骨盤神経叢の外側と尿管を1枚の面として剥離し“壁A”を同定する.
b) Step 2 No. 273郭清
壁Aを内側縁,総腸骨動脈腹側面を外側縁(壁B)とし,総腸骨静脈前面を郭清する.
c) Step 3 No. 263郭清
No.273郭清を遠位側に連続させるように,壁Bの内側面を露出しながら尾側に進む. 骨盤内臓神経S4 の外側では,下膀胱動静脈が近接し神経との剥離が困難となり,No.263Dの尾側縁とする.
d) Step 4 壁Cの同定
臍動脈索または上膀胱動脈をリトラクションアームで内側に牽引し,その外側に沿って剥離し,内腸骨動脈臓側枝の外側で形成された面(膀胱下腹筋膜):壁Cを同定する.なるべく末梢側(膀胱側)で操作すると良い.剥離を尾側に進め肛門挙筋筋膜に到達する.
e) Step5 壁Dの同定
外腸骨静脈の内側面を剥離し,骨盤壁を露出する(壁D).
f) Step 6 No. 283郭清
内側縁と外側縁を剥離した後に,閉鎖孔手前で閉鎖神経を温存したうえで閉鎖動静脈末梢を切離する.内外腸骨動静脈分岐部が郭清中枢側になる.リンパ節を閉鎖神経に沿って縦割りし,神経とリンパ節を分離する.
その後,内腸骨動静脈に沿ってNo.283の底面を郭清する.途中,閉鎖動静脈の中枢側をシーリング切離する.郭清の背側面では,うすく脂肪を被った仙骨神経・尾骨筋・Alcock管を認める.先に末梢側から剥離した肛門挙筋側からの剥離層と連続し,No.283郭清が終了する.
利益相反:なし
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