日外会誌. 125(6): 542-544, 2024
手術のtips and pitfalls
ロボット支援大腸手術の最新手技
中結腸動脈領域の郭清
関西医科大学 下部消化管外科学講座 渡邉 純 |
キーワード
ロボット手術, 横行結腸癌, 低侵襲手術, リンパ節郭清
I.はじめに
結腸癌手術において,本邦では早期癌に対するD2郭清,進行癌に対するD3郭清が標準治療である.一方,欧州ではcomplete mesocolic excisionが従来法と比較して予後が向上する可能性が示されている1)
2).横行結腸癌手術では,リンパ流は多彩であるが,中結腸動脈領域の郭清が必要となることが多い3).本邦において2022年4月から結腸癌に対するロボット手術が保険適応となった.多関節機能を有するロボット鉗子を有効に活用することで,中結腸動脈領域の郭清においても腹腔鏡手術の動作制限を克服し,より繊細なリンパ節郭清を施行できるものとして期待されている.
II.各術式別のトロッカー配置
ロボット手術における中結腸動脈領域のリンパ節郭清を必要とする術式は,横行結腸癌に対する結腸右半切除術,横行結腸切除術,脾弯曲部癌に対する結腸部分切除術である.各術式のトロッカー配置を図1に示す.
III.右側横行結腸癌に対する中結腸動脈領域の郭清
中結腸動脈根部の郭清が必要となるため,中結腸動脈左枝を温存し,右枝を根部で切離するD3郭清を施行することが多い.一方,リンパ節転移が明らかであれば中結腸動脈を根部で処理する拡大結腸右半切除が必要となることもある.
IV.中央横行結腸癌に対する中結腸動脈領域の郭清
横行結腸中央部の支配動脈は,中結腸動脈の左枝である.通常,横行結腸中央部のリンパ流は中結腸動脈の左枝に沿って流れることが多く,No.223リンパ節に流入する.D3郭清では中結腸動脈周囲のNo.223リンパ節の郭清が必要である.
V.左側横行結腸癌に対する中結腸動脈領域の郭清
左側横行結腸の支配動脈は,中結腸動脈の左枝または副中結腸動脈である.中結腸動脈根部(No.223リンパ節)の郭清が必要となる症例では,中結腸動脈右枝を温存し,左枝を根部で切離するD3郭清を施行することが多い.
VI.手術の注意点
中結腸動脈領域の郭清では,中結腸動脈根部から膵下縁までの郭清が必要となるため,郭清時に膵損傷の可能性がある,また,中結腸静脈は中結腸動脈根部の頭側に存在し,予期せぬ損傷によって止血に難渋することがある.ロボット手術においてもこれらの副損傷を防ぐために最大限の注意を払い,郭清をすすめる必要がある.
VII.まとめ
ロボット手術の導入によって,より安全で確実な中結腸動脈領域に対するリンパ節郭清が施行されることを期待したい.
利益相反:なし
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