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日外会誌. 125(4): 380-383, 2024

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手術のtips and pitfalls

系統的肝切除のtips and pitfalls

Positive stainingによる系統的肝切除

大阪公立大学 大学院医学研究科肝胆膵外科学

石沢 武彰 , 木下 正彦



キーワード
系統的肝切除, 肝亜区域切除, ICG蛍光法, Positive staining, Indocyanine green

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I.はじめに
Positive staining techniqueは,Makuuchiら1)が開発した従来の染色法(超音波ガイド下に色素を門脈枝に注入する)の視認性を蛍光イメージングで増強する方法である.本稿では,その具体的な方法と,臨床で活用するためのコツ・注意点を概説する.

II.Positive staining techniqueの方法
2008年にAokiらが,開腹手術中に担癌門脈枝をエコーガイド下に穿刺してICGを注入し,当該肝区域を蛍光領域として描出する方法を初めて報告した2).筆者らは,腹腔鏡手術の環境でこの手法が再現できること,少量のICGを注入することで非該当領域の蛍光上昇を回避できることを示し,これをPositive staining techniqueと名付けた3)
門脈枝のエコーガイド下穿刺のコツは従来の染色法と同一である.すなわち,該当する脈管を長軸方向になるべく長く出すこと,エコービームと同一面に針を刺入すること,である(図1).セルジンガー法の要領で穿刺することもある.一回の穿刺で注入するICGは0.25mgで十分である.筆者は,これを5mLのインジゴカルミン溶液に混和し,視診あるいは内視鏡のカラー像でも染色の成否を確認できるように工夫している.エコーの圧迫が強いと対象領域にICGが流れないので留意する必要がある.一度染色が成功すれば,肝区域の蛍光は手術終了まで持続するので,蛍光イメージングを切除線のマーキングだけでなく肝離断中のガイドとして活用することができる.

図01

III.Positive staining techniqueの利点と欠点
グリソン一括処理に基づくNegative stainingと比較した際の本法の最大の利点は,肝門を剥離しグリソン鞘を追跡する操作が不要なことである.本来の切除部位と無関係な脈管損傷(胆汁漏)を回避できるだけでなく,同部に癒着がある再肝切除でも実施しやすい.隣接する非切除肝区域を同定するcounter stainingの実施も可能である.
一方,特に腹腔鏡手術において,体外から門脈枝を穿刺することが技術的に難しい点が短所として指摘されている.これを解決すべく,腹腔鏡用の超音波プローブに取り付け可能な穿刺ガイドが市販されている.気腹前の体外穿刺,ロボット支援手術による体腔内穿刺も有効かもしれない.また,隣接する亜区域,亜々区域にICGが流入し蛍光領域が拡大してしまったり,逆に超音波プローブによる肝の圧排が強すぎて対象領域の蛍光の一部が欠損してしまったりすることもある.このような場合は,撮像装置のグレースケールモードを用いると,蛍光強度の階調が正確に再現され,蛍光の濃淡で各領域の境界を区別し切除予定部位を推定できることが多いので試していただきたい.

 
利益相反:なし

図2 図3 図4

図02図03図04

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文献
1) Makuuchi M , Hasegawa H , Yamazaki S : Ultrasonically guided subsegmentectomy. Surg Gynecol Obstet, 161: 346-350, 1985.
2) Aoki T , Yasuda D , Shimizu Y , et al.: Image-guided liver mapping using fluorescence navigation system with indocyanine green for anatomical hepatic resection. World J Surg, 32: 1763-1767, 2008.
3) Ishizawa T , Zuker NB , Kokudo N , et al.: Positive and negative staining of hepatic segments by use of fluorescent imaging techniques during laparoscopic hepatectomy. Arch Surg, 147: 393-394, 2012.

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