日外会誌. 125(2): 169-176, 2024
手術のtips and pitfalls
LPEC(Laparoscopic Percutaneous Extraperitoneal Closure)のtips and pitfalls
成人のLPEC tips and pitfalls
1) 聖隷浜松病院ヘルニアセンター 一般外科 宮木 祐一郎1) , 高橋 俊明2) |
キーワード
LPEC, 鼠径ヘルニア, 成人, 若年
I.はじめに
近年では成人鼠径ヘルニアに対する手術方法はメッシュ修復が標準である.感染リスク等の懸念がある際には組織修復法が選択されることがあるが,その機会は極めて少なくなっている.一方で乳幼児・小児の鼠径ヘルニアに対しては人工物であるメッシュ使用は選択されることなく,ヘルニア門の縫縮であるポッツ法や腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術「LPEC法」が標準である.
メッシュ使用の有無で大きな術式の違いが存在するが,実臨床における小児・成人の病態に明確な境界は存在しない.鞘状突起の開存を原因と考える乳幼児・小児の鼠径ヘルニアと,鼠径管後壁の脆弱性を原因と考える成人の鼠径ヘルニアであるが,年齢による区分ではなく発生原因による術式選択が本来あるべき姿だと考える.
鞘状突起開存の関与が考えられる成人症例(JHS分類:L-1型)を中心に,「LPEC法」の適用拡大が報告されているが,手術時間は他の腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術と比べても優位に短く,顕著な合併症も認めていない1).人工物であるメッシュを使用しないことで,若年成人であればメッシュ使用による妊孕性への懸念を減らすことができ,万が一の再発時にも再手術への影響は少なく済むと考えられている.成人LPEC法の長期成績のデータは存在せず,施行にあたっては十分な説明が必要であるが,有用な手術選択肢の一つであり今後の検討を続けていく価値がある.
利益相反:なし
PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。