日外会誌. 125(2): 154, 2024
会員のための企画
「周術期疼痛管理の最新知見」によせて
自治医科大学 外科学講座呼吸器外科部門 坪地 宏嘉 |
周術期の疼痛管理は,依然として外科における重要な課題の一つである.外科の各領域において低侵襲手術が普及し,開胸手術や開腹手術と比較して術後疼痛の軽減が図られてはきたが,胸腔鏡や腹腔鏡あるいはロボット手術に対応した周術期の疼痛管理も課題である.
術後急性期の疼痛は離床を遅らせ多様な合併症を惹起する.疼痛による喀痰排出の阻害は無気肺や肺炎などの呼吸器系合併症を引き起こすほか,交感神経の緊張に起因する循環器系の合併症にも繋がりうる.また,強い疼痛は術後せん妄の原因となる.これらは入院期間の延長をもたらし,慢性疼痛への移行は患者の生活の質を低下させる.
術後疼痛の制御は外科医だけではなく,麻酔科医やコメディカルと協調しながら対応する必要がある.令和4年度の診療報酬改定で「術後疼痛管理チーム加算」が新設された.これは麻酔科医を中心とした質の高い術後疼痛管理を実施した場合に限られ,各施設におけるプロトコールの作成が求められている.
このような現況から周術期疼痛管理の最新の知見を得ることは外科医にとって意義あることと考え,この分野の第一人者である自治医科大学附属病院周術期センター・麻酔科の鈴木昭宏先生に「周術期疼痛管理の最新知見」のタイトルでご執筆いただいた.本企画を通じて,会員諸氏の疼痛管理への理解が深まれば幸いである.
利益相反:なし
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