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日外会誌. 125(2): 96, 2024

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外科医労働環境改善委員会の活動

日本外科学会外科医労働環境改善委員長,神戸大学大学院医学研究科外科学講座食道胃腸外科学分野 

掛地 吉弘



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2024(令和6)年4月から,いよいよ医師の働き方改革の新制度が施行されます.問題となっている医師の長時間労働について,労務管理を徹底して労働時間を短縮することで医師の健康を確保し,質・安全が確保された医療を持続可能な形で患者に提供することを目指します.時間外労働の上限規制がかけられ,年の上限時間を一般労働者と同程度の960時間とするA水準,地域医療の確保のため1,860時間まで認める連携B・B水準,臨床研修・専攻医の研修のためのC-1水準,卒後6年目以降の高度な技能の修得のためのC-2水準(いずれも1,860時間)と一人一人の医師にいずれかの水準が適用されます.C-2水準の適用にあたっては,医療機関がC-2水準の技能の修得を希望する医師の育成に十分な教育研修環境を有していることに加えて,希望する医師個人が技能研修計画を作成し,各々が承認されて厚生労働大臣の確認を受ける必要があります.内容について相当の医学的専門性を必要とすることから,日本外科学会等の各学術団体が審査に協力しています.
外科医の労働時間短縮の抜本的な方策の一つとして,日本外科学会は2010年に厚生労働省に対して,外科医とともに周術期管理を協働する nurse practitioner(NP),および physician assistant(PA)の養成を要望しました.「特定行為に係る看護師の研修制度」の法制化が2015年に成立し,2023年3月時点での指定研修機関は47都道府県360施設,特定行為研修修了者は6,875名となっています.「医師の働き方改革に関する検討会」では「特定行為に係る業務については,タイムスタディ調査等によると,全体の約3%程度,外科系医師に限れば約7%程度の業務時間に相当し,週100時間勤務の外科系医師の場合,週7時間程度の時間がこれに相当する」と試算されています.薬剤師,臨床検査技師,医師事務作業補助者等による多職種のタスク・シフト/シェアも進んでいます. 主治医制からチーム制に変更し,効率的な患者情報共有を図る,カンファレンスのweb化や短縮,患者説明の際の動画使用など,多岐にわたる現場での工夫が必要です.働き方改革の基本的な考え方は,働く方々が,個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を,自分で「選択」できるようにするための改革です.規則や解釈に振り回されることなく,より良い労働環境を構築するために一人一人の意識改革が求められています.
外科医労働環境改善委員会は安全で質の高い医療の提供ができる医療現場の改善を目指して参りました.会員の皆様から様々なご意見をいただきながら,外科医がより活躍できるように,労働環境の更なる改善策を継続的に検討して参りたいと思います.

 
利益相反:なし

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