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日外会誌. 124(6): 565-567, 2023

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定期学術集会特別企画記録

第123回日本外科学会定期学術集会

特別企画(3)「外科における「働き方改革」への対応とその問題点」
3.術前外来から入院手術までをシームレスにサポートする体制構築

国立がん研究センター東病院 大腸外科・クオリティマネジメント室

西澤 祐吏

(2023年4月28日受付)



キーワード
医師事務作業補助者, Patient flow management(PFM), タスクシフト, 術前マネジメント

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I.はじめに
医師の働き方改革ではタスクシフトやワークシェアなどのキーワードが重要になる.医療現場でこれらを担うのが,医師事務作業補助者である.より円滑で効率のよいタスクシフトとワークシェアを医師事務作業補助者が所属するメディカルアシスタント室が中心となって実施している.外来予約カウンターでは,検査等のオーダーを日程調整から代行して行い,医師の外来業務負担軽減と患者待ち時間の改善を進めて来た.術前患者では診療科ごとにテンプレートを作成して,検査の漏れがなくなる運用を確立し,術前準備外来と連携を図っている.メディカルアシスタント室による活動は,医師や医療者の負担軽減に繋がり,結果として質の高い医療が提供できるサイクルの実現に繋がっている.

II.背景
がん診療における医療の質を向上させて,患者満足度の高い診療を継続する目的で,クオリティマネジメント室を2019年に設置した.クオリティマネジメント会議は病院幹部も含めたメンバーで月に1度開催しており,院内の問題点を抽出して部署を超えた改善活動を実施している.
外来待ち時間の短縮と働き方改革を背景とした医師のタスクシフト推進は優先順位の高い重点課題であり,外来診療で検査オーダーや診療予約を専門とする外来予約カウンターの開設を計画した.

III.外来予約カウンターの開設(図1
外来待ち時間の指標は,1時間以上の待ち時間割合を月ごとに収集している.1時間以上の外来待ち時間割合を6%以下にする事を2020年度以降の目標として来た.
外来における検査オーダー業務を行う医師事務作業補助者を2019年10月より導入して,電子カルテ,医師事務作業に関する教育を実施しながら各診療科に合わせた検査オーダーができるシステムを整備していった.
検査オーダーの依頼が定型化できるように,カルテ上にオーダー依頼のシステムを構築した.検査依頼の方法を統一して,センター化することで,少ない人数のスタッフでより多くの診療科に対応できるようにした.また,検査や診察予約の依頼は依頼医師からのオーダーが確実に記録として残るようにすることと,簡便に入力できることを両立するために,テンプレートシステムを構築した.
外来予約カウンターとして,医師事務作業補助者5名体制で2021年2月に開設した.教育やシステム構築に時間がかかったが,対応を多数の診療科に拡大していくためには十分な準備が必要であった.現在では診療科専用のテンプレートが多く作成され,利用患者数も増加している.

図01

IV.Patient flow management(PFM) (図2
医師事務作業補助者を統括し,ワークシェアによる業務の効率化を目的とした,メディカルアシスタント室を2021年10月に開設した.PFMの中心を外来予約カウンターが担い,看護部の運営する入院準備センターと連携をとり,外来診療から入院治療・手術に向けたサポートをシームレスに実施する体制を構築した.図2における各部署にメディカルアシスタント室のスタッフを配置して,ジョブローテーションとワークシェアを積極的に行い,流動的な人員配置が可能な組織を目指している.教育体制を確立するために,各部署で業務マニュアルの整備を行い,教育・研修の過程を可視化できる評価システムを導入した.また医師事務作業補助者を活用したPFMの実践では,医師が参画して運営やシステム構築を行うことが重要である.今後クリニカルパスと連動したPFMを実施することで,さらに業務の効率化を図ることを計画している.

図02

V.おわりに―医師の環境改善―(図3
働き方改革においては,医師がやらなくていい事を明確にすることが重要である.そのタスクシフト先が医師事務作業補助者であるが,その医師事務作業補助者を有効活用するためには,教育に医師が参画することが重要である.部署間の壁を低くして,業務連携することで,お互いが補完し合える関係が構築できれば,業務は効率化していく.働き方改革で医師や医療スタッフの職場に対する満足度が上がることが,医療の質の向上につながり,この医療の質向上が患者の満足度に繋がる.患者の満足度が高くなれば,病院の経営状況が改善する.そして利益を給与や設備投資に利用することが,また職員の満足度に繋がる.このループを継続することこそが,これからの病院経営において重要である.良い外科医の条件として,臨床,研究,教育をバランス良くすることを教わって来たが,これからはもう一つ病院経営という軸を加えて考える時代になった.

図03

 
利益相反:なし

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