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日外会誌. 124(5): 438, 2023

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会員のための企画

「がんサバイバーとエクササイズ」によせて

東海大学医学部 消化器外科

小柳 和夫



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高齢化社会を迎え各種がんの罹患率は増加し,国民の二人に一人は何かしらのがんに罹患する時代になった.一方で,医療技術の進歩に伴い,がん罹患後の生存率は改善し,がん診療も「cure」から「care」へとシフトしてきている.そして,増加するがんサバイバーに対して生活の質(QOL)が重要視されるようになってきた.運動療法(エクササイズ)はQOLの向上のみならず,がん治療の副作用軽減,がんの再発や死亡率の低下に関連することが知られている.
がんサバイバーの多くは,長期間あるいは高侵襲な治療の影響で体力や持久力の低下を経験しているが,実際にエクササイズを積極的に行っているサバイバーは決して多くはない.その重要性は示されてきているものの,実践されていないことにはいくつかの要因があげられる.一つにはがん患者のみならず医療従事者側にもエクササイズに対する認知度が低いことがあげられる.これは本邦の医療制度がまさに治療中の患者を対象としており,がんサバイバーのエクササイズに関して十分に機能できず,啓蒙活動も低調なためと考えられる.また,日々の臨床で多忙を極める臨床医にとって,がんサバイバーのエクササイズに時間を割く余裕がないことも事実である.そこで,本企画では,エクササイズを取り上げることで,がんサバイバーのさらなるQOL改善を図りたいと考えた.
私たちは,日常の診療で患者に対して「運動していますか」,「歩いていますか」と質問しているものの,「何を」,「どの程度」といった疑問にあまり明確に答えられていないのが現状かもしれない.そこで,本企画では,ヨガを通じて乳がんサバイバーのcareを実践している,東海大学乳腺・内分泌外科の新倉直樹先生,佐藤えみ先生に執筆をお願いした.がんサバイバーとエクササイズに関する海外の研究やエクササイズの有効性に関する話題を紹介していただくことにより,会員の皆様の一助になれば幸いである.

 
利益相反:なし

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